研究課題/領域番号 |
18H02998
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (30344451)
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研究分担者 |
大庭 伸介 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (20466733)
疋田 温彦 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (60443397)
北條 宏徳 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (80788422)
金澤 三四朗 鶴見大学, 歯学部, 助教 (60823466)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | single cell RNA-seq / open chromatin analysis / 幹細胞ニッシ |
研究実績の概要 |
本研究は、次世代シーケンサーなどバイオインフォマティクス技術を駆使し詳細に解析し得た核内ゲノム構造変化を指標にして、造血-間葉相互作用、具体的にはHSC-MSC相互作用により制御される幹細胞シグナルを同定し、このシグナル分子を活用したhigh potential stem cellのin vitro増殖培養法を確立することで、high potential MSCを細胞源とした骨再生医療を実現することを目的とし、平成30年度は、1)マウスMSCの純化マーカーの同定として、CD31, 45, Ter119陰性、Sca-1, PDGFR-α陽性で分画される細胞から、MSC特性の本質を探る方法として、上記マーカーで分離した細胞を基に、single cell RNA-Seqにて、個々の細胞をクラスタリングした。各クラスター遺伝子発現パターンから7つの集団を同定した。これらの集団をRNA-seqにて網羅的に遺伝子解析を行い、2倍以上発現変動遺伝子でかつ細胞分離に使用可能なマーカーを同定した。 2)MSC特性維持に関連するオープンクロマチン領域の検索として、1)で同定したマーカーで分離した各細胞集団を詳細に解析するため、分離直後の細胞集団をRNA-seq解析し、各集団における遺伝的な特性を評価した。また、同時に核内ゲノム構造変化とくに細胞種特異的な特徴を捉えるためのアプローチとして、ATAC-seqによるクロマチン構造の解析を行い、ATAC領域(=オープンクロマチン領域)を検出した。これらの結果から集団はそれぞれ遺伝学的に独立した細胞集団であったことを確認した。これらのうち、ES細胞やiPS細胞の様な幹細胞特性を有する細胞集団を同定した 以上のことから、これまでMSCと捉えられていた細胞はいくつかの集団で構成されており、それぞれが独立した特性を有していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Single cell RNA-seqにより同定した細胞集団が7つと比較的少なく、各細胞集団における細胞特性の解析が可能であった。また、分離マーカーの同定が予想に反して、早期に解決したことが進展に影響を与えたと判断した。さらに、RNA-seq解析やATAC-seqで検出した遺伝子ビッグデータを解析するためのスーパーコンピューターを簡易に操作できる熟練者が分担者として研究参画していたためと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度の計画として、 3)in vitro共培養系を用いたMSC特性維持シグナル分子の同定を行う。具体的には、造血‐間葉相互作用によりHSC/MSCは特性を維持する可能性がある。したがって、両細胞間で伝達される幹細胞シグナルを解析することで、特性維持に寄与する因子が同定できると考える。まず1)で同定したマーカーを基に純化したMSCとHSCを共培養し、開大または閉鎖するクロマチン領域を2)項の結果を参考に、ATAC-Seq解析を行う。この解析結果をもとに、2)項と比較し幹細胞シグナルに関与し得るクロマチン領域を選定し、領域内に含まれるキーとなる因子を特定する。因子について、lentivirus vectorを用いてMSCに導入する。その後、HSCとMSCを単独、あるいは共培養を行った後に細胞を回収し、コロニー形成能、多能性評価等で特性変化を検証し、最終的なシグナル分子を同定する。 4)シグナル分子を活用したhigh potential MSC増殖培養法の確立を行う。具体的には、上記の研究で確立した幹細胞間特性維持シグナルを活用し、再生医療に応用可能なhigh potential MSC増殖培養法を確立する。同定したシグナルの活性化または不活性化によって特性制御が生じる場合、シグナル賦活剤またはインヒビターが存在すれば細胞培養液中へ添加し、存在しないときはvirus vectorを用いて遺伝子導入し、増殖性ならびに多能性を、マウス骨髄を用いて評価する。骨髄液を10%FBS含有αMEMで培養し、さらに各種濃度の賦活剤を添加する。培養後の細胞曲線ならびに多能性を評価し、良好な条件を設定する。これら所見を総合し、幹細胞間シグナルを活用したhigh potential MSC増殖培養法を確立する。
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