研究課題/領域番号 |
18H03000
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岡本 哲治 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 教授 (00169153)
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研究分担者 |
吉岡 幸男 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 助教 (20335665)
浜名 智昭 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 助教 (40397922)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / 無血清培地 / 口腔扁平上皮癌 / IGF2 / exosome / sphere形成 / 放射線耐性 / regulatory chemical messenger (RCM) |
研究実績の概要 |
扁平上皮癌(SCC)の治療において、再発・転移の原因と考えられている癌幹細胞(CSC)の根絶には、その維持に深く関与している癌幹細胞niche機構を明らかにする必要がある。我々は、放射線耐性SCC株を樹立し、これら細胞がinsulin-like growth factor 2 (IGF2)を高発現し、CSC様の性質を有することを明らかにしてきた。本研究では、放射線耐性機構を細胞内分泌学的に解明することを目的とし、無血清培養系を用いて樹立耐性細胞株及び放射線単回照射細胞が分泌するIGF2及びexosomeなどのregulatory chemical messenger (RCM)の機能を検討した。培養細胞として外陰部由来扁平上皮癌細胞株A431を用い、低線量率放射線(LDR)及び高線量率放射線(HDR)照射系で樹立した、LDR-A431及びHDR-A431、さらにA431に単回照射したIR-A431を用いた。Exosome(exo)は野生型(WT)-A431などの培養上清より沈降法で精製した。各exo及びIGF2のWT-A431の放射線耐性能、増殖能及びProgrammed Death Ligand-1 (PD-L1)の発現に及ぼす影響について検討した。IGF2はLDR-A431及びHDR-A431の自己増殖促進因子として機能していることが明らかとなった。また、LDR-, HDR-,及び IR-A431由来exoはWT-A431の単層培養系での増殖能を抑制したが放射線耐性能を誘導した。また、exo及びIGF2はWT-A431のPD-L1発現を上昇させた。 以上の結果から、IGF2やLDR-, HDR-及び IR-A431由来exoは、癌微小環境における癌幹細胞維持及び免疫逃避に関与していることが示唆され、これらRCMを標的とした扁平上皮癌の診断及び治療への有用性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無血清培養系を用いて癌幹細胞の性質を持つ、放射線耐性細胞株の樹立に成功した。同細胞はIGF2を高発現しており、IGF2は自己増殖促進因子として機能していることを明らかにした。また同細胞の培養上清由来のexosomeは野生型細胞の放射線耐性を誘導することも明らかとした。
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今後の研究の推進方策 |
前年度明らかにした、放射線耐性細胞株におけるIGF2の機能をさらに明らかにする。また、同細胞の培養上清由来のexosomeが野生型細胞の放射線耐性を誘導したことから、exosome中に含まれるmicroRNAや細胞増殖因子などの放射線耐性因子を明らかにする。
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