研究課題
構音障害の病態解明を目的に、構音器官の形や動きとそこから産生される音との関連性の正確なシミュレーション法の確立を目指した。まず、健常者の母音/a/発語時のシミュレーション法の確立を目指した。/a/発語状態にてCTを撮影し、このCT-DICOMデータから、3次元可視化解析システム(Amira ver. 5、マックスネット)を用いて声道表面のサーフェスモデル(声道モデル)を作成した。この声道モデルを解析に適切なモデルへと調整し、鼻孔と口唇の開口部を設定した(SpaceClaim、サイバネット)。そして、声帯部に既知の点音源を設定して、数値流体解析の結果得られる声道内の流れ場の情報をもとに音の伝搬を解析し(ANSYS CFD、サイバネット)、鼻孔と口唇の開口部から放出される音のスペクトル成分を求めた(WAONおよびWAONAero、サイバネット)。この際、媒質特性、吸音条件等を種々調整して適正化を図ることにより、安定して周波数応答曲線を算出することが可能となった。次に、シミュレーションにより算出される音のスペクトル成分の検証を行った。まず、マイクロフォンを用いて、同一対象者から記録される実際の音声からフォルマント周波数を求めた(マルチスピーチ3700、KayPentax)。さらに、CTデータから3次元実体モデルを作製し、このモデルを用いて、人工喉頭を音源として産生される音をマイクロフォンから記録した。この音声からマルチスピーチを用いてフォルマント周波数を求め、本シミュレーションの精度を検証した。その結果、シミュレーション結果と、実音声、実体モデル音声の三者から算出されるフォルマント周波数は10%以内の差であることが分かった。母音フォルマント周波数弁別閾値として報告されている5~10%と比較して、十分な精度でシミュレーション可能であることが明らかとなった。
3: やや遅れている
子音/S/のシミュレーション法が確立できていない。母音/a/発語時のシミュレーション法を確立するために、算出パラメータの調整や、声道モデルの後方限界(気管部分をどこまで含めるのか)を最適化する必要があり、実音声や実体モデルからの結果と比較・検証するのに予想以上に時間を要したため、子音/S/のシミュレーションに進むことができなかった。
子音/S/のシミュレーション法の確立に関しては、母音と異なる解析方法を応用する必要がある。解析方法として、Large Eddy Simulation (LES)を用いることでシミュレーションの実現を目指す予定である。
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