研究実績の概要 |
本研究では、器質性構音障害の病態解明を目的に、流体音響解析法を応用して、構音器官の形や動きと産生される音との関連性を正確、詳細にシミュレーションすることを目指すものであり、母音/a/のシミュレーション法の確立に引き続いて、子音/∫/のシミュレーションの確立を目指した。 /∫/発声時に撮影したCTデータから声道モデルを作成し、このモデルに対して、ANSYS CFDを用いて、流体解析(computational fluid dynamics: CFD)計算を実施することにより、圧力変動が最も大きい部分を算出し、その場所に点音源を設定し、音場を周波数領域で計算した。その結果を、同一被検者から直接マイクロフォンを通して録音した子音/∫/に対する周波数解析を行った結果と比較すると、4,000Hzと8,000Hz付近でピークを有する周波数特性が得られたが、6,000Hzと10,000Hz付近でのディップは観察されなかった。そこで、さらに、/∫/発声時のCTデータから声道の実体モデルを作製し、その実体モデルに対して、24L/min.の流量で圧縮空気を流して、無指向性のマイクロフォンを用いて音声を記録し、周波数解析を行った。その結果、6,000Hzと10,000Hz付近でのディップが明確に観察された。この結果を踏まえて、シミュレーションの方法を再考した。前回のCFDでは、表面の圧力変動による表面音源を用いていることから、6,000Hzと10,000Hz付近でのディップが観察されず、一方で、CFDで得られた表面音源ではなく空間音源を用いることで、6,000Hz付近と10,000Hz付近のディップが新たに観察することが可能となった。
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