口腔扁平上皮癌細胞株(SASとHSC2)を用いて研究を行った。定常状態において、OSCC細胞に対するIL-6/IL-6Rシグナルをブロックすると、STAT3の下流のシグナルを抑制することが確認できた。 In vitroの実験では、コントロール群とトシリズマブ処理群に分けて、放射線(X線6 Gy)照射後の細胞死をclonogenic assay およびmodified high density assayで比較検討を行った。その結果、OSCC細胞に放射線が照射されると、OSCC細胞より細胞外に分泌されたIL-6が放射線照射後の細胞生存にオートクラインに作用している可能性が示唆された。さらに、OSCC細胞とTAMの共培養下での実験結果から、OSCC組織に放射線が照射されると、照射後にTAMより細胞外に分泌されたIL-6がOSCC細胞の生存にパラクラインに作用している可能性が示唆されるが、その影響度はオートクラインのメカニズムよりも弱いものと推測された。 In vivoの実験では、ヌードマウスの背部にOSCC細胞を移植し、トシリズマブ投与下にマウスの背部にX線4 Gy/日ずつ週5回、3週に渡って合計60 Gy照射した。経時的に腫瘍体積を測定し、X線照射後の腫瘍組織を用いて免疫組織化学染色を行った。その結果、トシリズマブの投与によってin vivoでのOSCC細胞の放射線感受性が増強し、その効果はIL-6下流のNrf2とSTAT3の活性の低下によってもたらされていることが考えられた。OSCC患者の臨床検体の一部を採取してヌードマウスの背部皮下組織に移植したPDXモデルにおいてIL-6シグナル阻害の効果を検証し、同様の効果が得られている。
|