研究実績の概要 |
本研究では,口腔がん患者個人の遺伝情報に基づいた口腔がんの腫瘍消失をもたらす新規がんワクチン療法を構築するために, 次世代シークエンサーを用いて口腔がん患者個人のネオアンチゲンおよび抗腫瘍効果を示すTILを同定することを目的としている.具体的な研究手法として研究分担者の鈴木らが開発した Adaptor-ligation PCR 法(Matsutani T, Suzuki R, et al.Hum Immunol, 1997)と, 独自に開発したバイオインフォマティクスによるデータ処理(Kitaura K, Suzuki R, et al;BMC Immunol. 2016, FrontImmunol. 2017)を加えることによって, Neo-antigen を認識する抗腫瘍効果を持つTILのTCR レパトアのライブラリを構築していく.本研究案については鶴見大学歯学部および関東労災病院の倫理審査委員会による承認を得て, 臨床研究の患者登録を開始した.また, 解析を行うにあたっては, 研究代表者所属の鶴見大学歯学部口腔顎顔面外科学講座と(独)国立病院機構相模原病院臨床研究センターは, 本研究遂行のために人的交流(複数名の大学院生の受け入れ)を含めて共同研究を継続しており, 本研究遂行にあたっての連絡調整方法など連携方法について確認を行った.今年度実施した研究実績は下記の通りである. 1)標準治療を実施した口腔がん患者の臨床情報収集(熊谷・堀江・濱田):研究代表者所属の鶴見大学歯学部口腔顎顔面外科学講座および関東労災病院で標準治療を実施した口腔がん患者に本研究の意義を説明し, これまでに7名の患者登録を行った.口腔がん患者の年齢・性別・既往歴・現病歴・現症(全身,局所)についての詳細な調査を行って臨床情報を得た. 2)検体採取・免疫組織学的検討・ヒトHLAタイピング調査(熊谷・堀江・濱田):口腔がん生検あるいは切除時の切除材料の病理学的評価を実施した.
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今後の研究の推進方策 |
口腔がん特異的変異抗原(Neo-antigen)解析(熊谷・濱田・鈴木) 登録患者数が20名となった段階で, 検体の一部からDNAを抽出し, HLAタイピング(HLA-A, B, DR)を実施する. 次世代シーケンサーを用いて患者毎に腫瘍組織と正常組織のエクソーム解析とRNA-Seq解析を併用して腫瘍特異的体細胞遺伝子変異を同定し, 腫瘍におけるその遺伝子発現を確認する. 変異遺伝子産物のアミノ酸配列情報をもとに, 患者のMHCクラスI分子に結合して抗原提示される可能性がある8~11アミノ酸からなる変異ペプチド配列をネオエピトープとして予測する.
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