研究課題
う蝕の主要な原因菌である Streptococcus mutansは、約10~20%に菌体表層にコラーゲン結合タンパク(collagen-binding protein; CBP)を発現している。本研究では、CBP陽性S. mutansと感染性心内膜炎、脳血管疾患およびIgA腎症に及ぼす影響について検討を行った。CBP陽性S. mutans株が感染性心内膜炎に及ぼす影響のうち、血管内皮細胞への侵入メカニズムの解明を試みた。ヒト臍帯静脈血管内皮細胞にCBP陽性S. mutansを侵入させた後に、マイクロアレイ法を用いた解析の結果、CBP陽性S. mutansは低分子量Gタンパク質に関連する遺伝子の発現変化を生じさせることにより、細胞骨格の構造変化を引き起こして血管内皮細胞内に侵入することが示唆された。CBP陽性S. mutansと脳血管疾患の関連性に着目した研究として、脳卒中のため入院している111名の患者を対象に、180日以上の間隔を空けて撮影されたMRIの画像を比較するとともに、デンタルプラークからCBP陽性S. mutansの検出を行なった。その結果、CBP陽性S. mutansを有する患者の約半数で新たな脳微小出血の出現が認められ、本菌が検出されなかった患者と比較して脳微小出血が有意に出現しやすくなることが明らかとなった。抜歯のような侵襲的な歯科処置の際に、血液中に侵入した多量のCBP陽性S. mutansが腎臓に及ぼす影響について検討した。4週齢のラットの頸静脈からCBP陽性S. mutansを投与して、経時的な分析を行なった。その結果、8週齢の時点でタンパク尿が出現するとともに、腎臓のメサンギウム領域にIgAの沈着を認め、CBP陽性S. mutans がIgA腎症様腎炎を誘発する可能性が示唆された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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