研究課題/領域番号 |
18H03011
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
井澤 俊 岡山大学, 大学病院, 講師 (30380017)
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研究分担者 |
松本 健志 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (30249560)
竹下 淳 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 運動器疾患研究部, 室長 (50263009)
泰江 章博 徳島大学, 病院, 講師 (80380046)
岩浅 亮彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (90746025)
森 浩喜 徳島大学, 病院, 助教 (90779985)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / 顎顔面領域骨代謝性疾患 / シグナル伝達 / 骨リモデリング / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
破骨細胞は単球・マクロファージ系の血球系細胞から融合・多核化されて形成され骨吸収に重要な役割を果たす事が知られている。RANKL刺激によって誘導されるヒストン脱メチル化酵素であるJmjd3により、破骨細胞分化のマスター転写因子NFATc1プロモーター上のヒストンH3の27番目のリジン残基K27me3が脱メチル化され、遺伝子発現が誘導されることが知られている。H3K27のトリメチル化(H3K27me3)は、ES細胞などにおいて、分化誘導にかかわる遺伝子の発現抑制にかかわるヒストン修飾とされており、トリメチル化が外れることによって遺伝子発現が誘導される。ChIPシークエンスを用いた検討から、RANKL刺激によってNFATc1遺伝子の転写開始点付近におけるH3K27me3の発現が低下していることが明らかになった。これまでのエピジェネティック研究による結果はAsxl1によるNFATc1遺伝子プロモーター上のヒストン脱メチル化というエピジェネティクスな修飾が、破骨細胞分化に重要な役割を果たしている可能性を示唆している。そこで破骨細胞前駆細胞RAW264.7細胞を用いた予備的検討を行ったところ、Asxl1はRANKL刺激によって誘導されるが、Asxl1のノックダウンによってH3K27meの脱メチル化が減少し、RANKLによる破骨細胞分化、破骨細胞アクチンリング形成及び細胞骨格形成能、破骨細胞骨吸収能が誘導されることが判明した。さらに、Asxl1ノックダウンによるJmjd3の約40倍の発現上昇を認めた。これらの結果はASXL1によるNFATc1プロモーター上のヒストン脱メチル化というエピジェネティックな修飾が、破骨細胞分化に重要な役割を果たしている可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エピゲノムによる破骨細胞分化、破骨細胞アクチンリング形成及び細胞骨格や破骨細胞骨吸収能の細胞内シグナル伝達への影響について詳細に解析することを当該年度の目標としていた。そこで破骨細胞前駆細胞RAW264.7細胞を用いた予備的検討を行ったところ、Asxl1はRANKL刺激によって誘導されるが、Asxl1のノックダウンによってH3K27meの脱メチル化が減少し、RANKLによる破骨細胞分化が誘導されることが判明した。さらに、Asxl1ノックダウンによるJmjd3の約40倍の発現上昇を明らかにした点でほぼ計画どおりの進捗状況であり、来年度の研究計画もすでに筋道をたてている。さらに、研究成果の学会および論文掲載の準備を進めている段階であることから、概ね順調に進展していると考えられるが、より詳細な検討を必要とする。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの申請者らの予備検討により、骨髄細胞由来マクロファージをサイトカインRANKLで刺激後にエピゲノムBaP1の発現が急激に上昇し、Asxl1はブレーキ役、BaP1はアクセルとして分子複合体を形成しミエロイド系マクロファージから成熟破骨細胞への分化・活性化の過程でBaP1シグナル伝達が極めて重要な役割を果たしていることが示唆されることよりRANK/RANKLシグナルとBaP1シグナルとの相互関係を骨吸収能や細胞骨格にも焦点をあて今後詳細に解析する。また、得られたエピジェネティクスを中心としたシグナル伝達系の結果をもとに顎関節リウマチなどの顎顔面領域骨代謝性疾患に対する破骨細胞を標的とした治療や創薬開発にも応用する予定である。以上の内容の実験を遂行する上ではハード面、ソフト面ともに問題はない。
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