研究課題/領域番号 |
18H03015
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
沢 禎彦 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70271666)
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研究分担者 |
加藤 幸成 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (00571811)
坂上 竜資 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (50215612)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 / TLR / 歯周病 |
研究実績の概要 |
歯周病原細菌P. gingivalis由来lipopolysaccharide (LPS)は自然免疫受容体TLR2で宿主に認識されサイトカイン産生を誘導する。P. gingivalis LPSが糖尿病マウスに腎症を起こすこと、TLR2活性型に無効のTLR4阻害剤Eritoran(,83142-1:2013-0162:Eritoran/E5564, Eisai Inc. USA)が、糖尿病マウスのP. gingivalis LPS誘導性腎症の発症を阻止することを報告した。この時、腎症マウスに腸炎が確認され、強力なTLR4リガンドである腸内細菌E. coli LPSの腎循環への侵入が考えられた。そこで、糖尿病環境で血中に入ったP. gingivalisは構造の複雑な糸球体に蓄積し、TLR2経路で腎症を誘発すると同時に糖尿病性フレイルによる腸管免疫の撹乱により下部消化管の大腸菌LPSの腸管通過が腎症に関係すると予想した。現在、P. gingivalis LPS誘導性糖尿病性腎症マウス腎糸球体における白血球接着因子の過剰発現、血中リン濃度の調節を行うFGF23の蓄積、さらに、血圧を負に制御するACE2の近位尿細管brush borderにおける過剰発現まで明らかにした(投稿準備中)。一方アンケート調査では糖尿病で腎症発症以前から歯周病を有する割合が有意に多く腎症合併の一要因となる可能性を示唆する結果が出ており、また高血圧、骨粗しょう症など、血圧調節異常、骨代謝異常を合わせていることが腎症合併の要因となっている可能性を示唆する結果が出ている。さらに、多くの腎症患者でフレイル・大腸過敏症の既往・現病歴があり、腸管免疫とフレイルによる消化管免疫の不調が腎症の進行を助長する可能性が明らかになって来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、アンケート調査のみ、母数獲得を目指す対象が特別警戒地域のため待機中である。
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今後の研究の推進方策 |
この年度は、P. gingivalis LPS誘導性糖尿病性腎症モデルマウス腎糸球体血管内皮細胞における白血球接着因子VCAM-1およびE-selectinの過剰発現を明らかにした。次年度では遺伝子解析・生化学的タンパク分析と市販ヒトサンプルを早急に入手してエビデンスの確認を行う。またこの年度は、P. gingivalis LPS誘導性糖尿病腎近位尿細管(brush border)における血中リン濃度の調節を行うFibroblast growth factor 23(FGF23)の蓄積を明らかにした。次年度では糖尿病性腎症マウス骨のリン代謝異常が腎障害に影響する分子生物学的機序の実験仮説を検証していく。さらにこの年度は糖尿病腎近位尿細管(brush border)における、血圧を負に制御するangiotensin-converting enzyme II(ACE2)の過剰発現を明らかにした。次年度では、糖尿病マウスのP. gingivalis LPS投与と高血圧による腎症促進について検証を進める。糖尿病に歯周病と骨代謝異常・高血圧・消化管不全が加わることで糖尿病の複雑系病因が形成され、腎症が引き起こされる仮説をさらなるマウス実験とアンケート調査で検証していく。これらのエビデンスとして疫学調査を同時進行していく。アンケート調査では、糖尿病期間で腎症発症以前から歯周病を有する割合が有意に多く、腎症合併の一要因となる可能性を示唆する結果が出始めており、さらに、多くの腎症患者でフレイルおよび大腸過敏症の既往・現病歴があり、腸管免疫とフレイルによる消化管免疫の不調が腎症の進行を助長する可能性が明らかになって来ている。血圧調節異常、骨代謝異常を合わせていることが、腎症合併の要因となっている可能性が考えられる。現在コロナ禍で完全に中断しており再開が待たれるが、動物実験を優先する。
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