研究課題/領域番号 |
18H03017
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
菊谷 武 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (20214744)
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研究分担者 |
川口 孝泰 東京情報大学, 看護学部, 教授 (40214613)
井出 吉昭 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (70409225)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 嚥下造影検査 / 人工知能 / 自動解析 / 誤嚥 / 咽頭残留 / サルコペニア |
研究実績の概要 |
嚥下造影検査(VF)は、その有用性の高さから、嚥下機能評価におけるゴールドスタンダードといわれている。本検査には専用の機器はなく一般に使用されているX線透視装置に録画機能を付加し、画像として録画することで、客観的に評価できる資料として保存したり、カンファレンスなどで供覧する。これまで、本検査の検査基準では、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の示す診断基準を用いるのが一般的となっている。診断のためには、静止画としたり、巻き戻したりしながら評価を行っている。治療のための検査においては、嚥下器官の動態などの検査所見に応じて、適した食形態や適した姿勢などの代償法を試しながら検査を行う。このため、評価には時間を要し、即時性にも欠き、多くの問題を有している現状である。そこで、本システムでは、画像解析技術とAI(人工知能)を用いて、即時的な診断が可能な嚥下造影検査解析を行おうとするものである。本研究では、これまで、VF検査で示される嚥下器官の動態とサルコペニアとの関連を嚥下障害患者に対して検討した。サルコペニア患者は、喉頭上方移動量、咽頭腔断面積において有意に低値を示した。サルコペニア患者における機能の低下の指標としてVFにおける嚥下時の喉頭上方移動量の測定,および咽頭腔断面積の測定が有用である可能性が示された。また、嚥下障害患者にみられる舌筋力の低下が嚥下時咽頭動態に与える影響を明らかにすることを目的とし、骨格筋量(SMI)および舌筋力を測定し、VF画像との関連を解析した。その結果、サルコペニアの影響は舌筋力に影響を及ぼすものの咽頭収縮に影響を与えず、むしろ舌筋力を補うような動態を示すことが明らかとなっていた。これらのことから、嚥下造影検査の指標はSarcopenic Dysphagiaの診断にも利用できる可能性を示したものといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
VF 側面画像評価基準は、項目数が多く、VF 側面画像評価基準に記載された全ての項目を観察せずとも、嚥下動作の特徴(誤嚥)を把握することはできないかという発想のもと、VF観察データ及び解析用データを用いて、誤嚥の嚥下動作の特徴の抽出を試みた。観察した100例のうち、データセットに欠損は無く、外れ値を思われるデータを持たない56例(誤嚥なし24例、誤嚥あり32例)を解析に供した。 観察項目は、VF誤嚥データより、直前の残留の有無、口腔内残留の有無、鼻咽腔逆流の有無、軟口蓋挙上の優劣、喉頭蓋の有無、喉頭蓋残留の有無、梨状窩残留の有無、とした。計測データは、測定されたデータより、下記を選択した。1)計測点1のY座標の合計移動距離、2)計測点2のY座標の合計移動距離、3)計測点1の原点からの距離の変化量の合計、4)計測点2の原点からの距離の変化量の合計、5)甲状軟骨の挙上開始から最下点までの時間、6)甲状軟骨の挙上時間と下降時間の比率(down_up_timeratio: sec)。目的変数は「誤嚥あり・なし」説明変数は「観察データ」とし、SVMを用いて機械学習を実装 させたところ、正解率(Accuracy):62.3%であった。一方で、SVMを用いて機械学習を実装したところ正解率(Accuracy):70.5%に向上した。観察データだけではなく、動画解析データを含めることで、判別精度の向上を確認することができました。動画解析データを活用することで、VF側面画像評価基準に代わる新たな評価基準を提案できることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析から見えてきた課題は以下である。1)嚥下前・中・後の誤嚥分類は、サンプル数が少ないため検証できていない。2)計測データを追加することで、より正解率があがる項目を検索する、3)目的変数として、誤嚥だけでなく、咽頭残留や鼻咽腔逆流を加える。4)現在の状況では、計測データ取得に膨大な時間を要するために時間計測や距離計測の自動化が必須である。 そこで、サンプル数の増加と計測データの充実、観察項目の追加、自動計測への取り組みが必要である。計測データでは、食道入口部の開大幅の計測値を加えたことと、目的変数に「喉頭侵入」「鼻咽腔逆流」や「サルコペニア」を加えることとしている。画像の自動解析については、患者の体位の変化から、コントラストが変化するために、自動化できるところと、できないところが明らかになっており、さらなる効率化を図る努力を重ねる。特徴量の絞り込みの方法としては、基本的なラッパー法やフィルター法をベースに検討する。この手順を繰り返し行い、少ない特徴量で症状の推定をする予測器を生成する。これによって、検査動画像からの症状推定と症状の原因特定を同時に実現することを試みる。特に本年度は、これら症例における関連すると思われる測定値の測定を自動化する試みをおこなう。それには、画像処理技術を利用して、自動追跡を行うポイントを明かにすることと、自動追跡によって得られた測定データをさらに教師データとして蓄積し、より精度の高い分析が行えるようにする。
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