研究課題/領域番号 |
18H03030
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
武田 裕子 順天堂大学, 医学部, 教授 (70302411)
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研究分担者 |
堀 浩樹 三重大学, 医学系研究科, 教授 (40252366)
孫 大輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (40637039)
小曽根 早知子 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80645549)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 健康の社会的決定要因 / SDH / 健康格差 / 動画教材 / 「やさしい日本語」 / 在住外国人 / 経済的困窮支援 / 変容的学修 |
研究実績の概要 |
本年度は、健康格差の社会的要因(SDH)の理解を深めるための①教材作成、②教員・指導医対象の講演会やワークショップ開催、③社会資源を学べるアプリの開発、および④SDH学修者の振り返り解析を実施計画に挙げた。 ①教材作成:医療が必要であるが様々なSDHにより医療機関へのアクセスが制限される患者の存在を通して、SDHについて学修する動画教材を作成した。糖尿病で入院治療を必要とするも受診を中断する若い男性の事例で、3つのビデオ・クリップに分けてアクティブ・ラーニングの教材とした。さらに、在住外国人の「言葉の壁」や「こころの壁」を低くするツールとして「やさしい日本語」を学修するパワーポイント教材、コミュニケーション・スキル修得のためのロールプレイ・シナリオ、サンプル動画を作成した。 ②教員・指導医を対象とした講習会・講演会の開催:SDHを世界に広めたマイケル・マーモット卿の講演会ならびにシンポジウム『格差という病に挑む:マーモット先生と語る会』(2019年6月15日)、SDH教育導入のためのワークショップ:『第73回医学教育セミナー:既存のカリキュラムで「健康の社会的決定要因(SDH)」を教える・学ぶ』(2019年8月10日),実地医科の会『じっくり考えてみよう、健康と貧困」(2020年1月12日),日本国際保健医療学会学術大会シンポジウム『SDH:地域にある国際保健医療活動』(2019年12月7日) ③社会資源を学ぶアプリの開発:日本HPHネットワークが開発した経済的困窮支援ツールを基に、経済的に困窮している患者が利用できる社会制度を検索するソフトを作成した。専門家よりアプリではなくウェブサイトにした方がOSの変化に対応しやすいという助言を得て、アプリ風のサイトにした。 ④学修者の振り返り解析:インタビュー・データではなく、体験前後に提出されたエッセイの解析を行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗としては非常に進んだ部分と、遅れている部分がある。 ●非常に進んだ部分 動画は、既存のSDH啓発アニメーションを製作者から教育用に改変し公開する許可を得ることができたため、効果的な教材を用意できた。在住外国人のための「やさしい日本語」教材も、日本語教育専門家、多文化共生コーディネータの協力を得て作成することができた。これらを用いたワークショップも繰り返し開催し、より効果的な研修プログラムとなっている。さらに、ワークショップ参加者が持ち帰って自施設や地域で学修会を開催する伝達学修も始まっている。研究代表者と研究分担者がこれまでに実施してきたSDH教育について、医学部・歯学部教員が参加したワークショップ『第73回医学教育セミナー:既存のカリキュラムで「健康の社会的決定要因(SDH)を教える・学ぶ」』で発表した。これを基に、日本医学教育学会機関誌『医学教育』50巻5号で、『既存のカリキュラムで「健康の社会的決定要因(SDH)を教える・学ぶ』をはじめさまざまな媒体で報告した。また、本課題の成果物を発信するウェブサイト「SDH教育ポータル」を作成し、社会制度検索ツールだけでなく、SDH教育導入に役立つパワーポイントや論文などの資料集を用意し、自由に活用できるようにした。 ●遅れている部分 学生にとってSDHの体験学修が変容的学修になるのではないかという仮説にもとづき、学生にインタビューを行い解析する研究計画を立てていたが、担当する研究者がインタビューに時間をさけず、解析が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も、健康格差の社会的要因(SDH)の理解を深めるための①教材作成、②教員・指導医対象のファカルティ・ディベロップメント、③社会資源を学べるアプリ風ウェブサイトの開発、④SDH学修者の振り返り解析を行う。2020年1月に新型コロナウイルスの世界的感染拡大が生じたため、今後、講演会やワークショップ開催は困難になると思われる。学会発表も制約を受ける可能性がある。そこで、ホームページ「SDH教育ポータル」の充実を図り、ファカルティ・ディベロップメントを対面で行う代わりに、教員・指導医へのポータルサイトの紹介をメーリングリストや学会誌等を用いて行う。活用を希望する教員・指導医には、個別に相談に乗る体制をつくる。遅れているSDH学修者の振り返りの解析については、すでに蓄積している、体験学習前後のレポートを用いて実施する。
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