研究課題/領域番号 |
18H03036
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
遠山 千春 筑波大学, 医学医療系, 客員教授 (10150872)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 行動試験 / 幼若期マウス / 発達神経毒性 / 高次脳機能 / 脳発達 / 安全性評価 / リスク評価 |
研究実績の概要 |
初年度は、成熟マウス用の全自動行動試験装置及び試験プロトコルを改良し、離乳直後から数週間にわたる幼若マウスの集団飼育環境下全自動行動解析システムを完成させた。初年度から今年度にかけて本システムを用いて行った予備実験では、C57BL/6Jマウスの認知行動について、その雌雄差が、離乳後間もない4週齢目から出現することを初めて見出した。この現象は、今後環境化学物質等が脳と行動の性差形成に及ぼす影響を評価する上でも重要な毒性指標となると期待される。以上の成果について、第8回日本DOHaD学会学術集会、第49回日本神経精神薬理学会、第6回アジア神経精神薬理学会、第59回米国毒性学会)にて発表した。このうち、第49回日本神経精神薬理学会では優秀演題賞に選ばれた。また、今年度は本システムを用い、実際に幼若マウスを対象とした発達毒性試験への応用を開始した。まず、妊娠12.5日目のマウスにバルプロ酸(VPA) 500 mg/kg体重を腹腔内投与し得られた仔マウスを、胎仔期VPA曝露による発達障害モデルマウスとして実験に使用した。同様に、妊娠12.5日目のマウスにPoly(I:C) 20 mg/kg体重、ないしLPS 60 ug/kg体重を腹腔内投与し得られた仔マウスを、母体免疫賦活化による発達障害モデルマウスとして実験に使用した。対照群、VPA投与群、Poly(I:C)投与群、LPS投与群の計4群を、離乳直後の3週齢時から上記の行動試験システム内に同居させ、その後数週間にわたり認知行動試験を行った。この試験データについて現在解析を進めている。並行して、Poly(I:C)およびLPS投与後の母マウスの血液から、Bio-Plexシステムを用いて血清中の23種類のサイトカイン量を測定し、実際に炎症反応が起こっていたことを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に確立した幼若期マウスを対象とした全自動行動試験システムに関する研究成果を、予備実験から得られた知見を合わせてまとめ、国際学会を含む計4件の学術集会(第8回日本DOHaD学会学術集会、第49回日本神経精神薬理学会、第6回アジア神経精神薬理学会、第59回米国毒性学会(開催中止のため誌上発表))にて発表した。特に第49回日本神経精神薬理学会では優秀演題賞に選ばれたことから、現時点で一定の評価を得られていると言える。本システムを用いた幼若期マウスを対象とした発達神経毒性試験への応用は予定通り開始し、データ取得を完了している。最終年度は、当初予定していたよりもさらに研究内容を拡大できる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
幼若期マウスを対象とした全自動行動試験装置のさらなる改良と発達神経毒性試験への応用実験を実施する。具体的には、幼若マウスの集団飼育環境下において、実験群ごとに異なる種類の飼料を給餌できるシステム、個体ごとの毎日の体重計測を自動で行えるシステムを新たに追加する。これにより、発達期における食生活の違いが体重の増加および認知・行動に及ぼす影響を、数週間にわたり全自動で評価可能になると期待できる。さらに、この試験系の有効性を確かめるため、銅キレーターのクプリゾンの発達期混餌投与による影響を、体重と認知・行動の両面から評価する毒性試験を実施する。
|