研究課題/領域番号 |
18H03037
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
山縣 然太朗 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10210337)
|
研究分担者 |
鈴木 孝太 愛知医科大学, 医学部, 教授 (90402081)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 出生コホート / DOHaD / メンタルヘルス / 思春期 |
研究実績の概要 |
DOHaD(Developmental Origins of Heath and Disease)の視点から思春期、青年期の健康支援に資する科学的根拠を創生することを目的としている。すなわち、胎児期から幼児期の環境要因と遺伝要因が、思春期および青年期の心身の健康に及ぼす影響を明らかにすることであり、特に、肥満、やせなどの体格、アレルギー、う蝕、メンタルヘルスをアウトカムとし、その要因を明らかにする。 2019年度は、例年のように乳幼児健診、思春期健診で本調査を実施した。そのデータをもとに胎児期から幼児期に収集した生活習慣や社会経済学的変数に加えて、学校と協力した思春期調査で収集した児童、生徒の生活習慣と心身の健康状態をリンケージしたデータベースを作成した。 2019年度は胎児期の受動喫煙と幼児期のBMIの増加との関連を明らかにするために、1991年から2003年に出生した児についてマルチレベル解析を行った。その結果、妊娠期の喫煙(胎児の受動喫煙)が出生体重の有無にかかわらず将来のBMI増加の要因になることが明らかになった。本成果はTobacco induced diseasesの2020年4月号に掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度までに甲州市が実施した乳幼児健診を解析した。 対象は1991年4月1日から2003年3月31日に甲州市で出生して、出生体重、妊娠前の母体BMI、妊娠中の喫煙状況に関するデータが利用可能な児である。小児のBMIは、世界保健機関によって確立されたBMI zスコアによって推定した。出生時体重の四分位数は、性別と出産歴によってグループ化した(最初と2番目またはそれ以上)。各出生体重四分位数による異なるレベル変数としての個人と時間の両方を含むマルチレベル分析を使用して、統計分析のBMI zスコアの軌跡を記述した。 結果は、すべての四分位グループで、喫煙する母親から生まれた子供は出産時に痩せていたが、BMIのzスコアは3歳前後で増加した。これらの子どもたちは禁煙の母親から生まれた子どもよりもBMI大きかった。妊娠中の母親の能動喫煙と子供の年齢との間の有意な相互作用は、出生体重の第1四分位および第2四分位のそれらで見られた。さらに、出生時体重の第2四分位で乳児期の急速な成長が観察された。 結論として、妊娠中の母親の能動喫煙が小児期の成長に及ぼす影響は、出生体重の有無にかかわらずあることが明らかになった。
|
今後の研究の推進方策 |
1.データの収集は2020年の思春期調査を実施する。内容は思春期調査は生活習慣、起立性調節障害、バールソン抑うつ尺度、ネット依存(ヤングのスケール)で、ネット依存については小学生にも実施することとした。また、学校健診における身長体重のデータを入手する。 2.データリンケージは思春期調査対象者の妊娠届け出時調査、乳幼児健診データ(3・4か月、7・8か月、1歳6か月、3歳、5歳)のデータと突合し、データクリーニングを実施する。 3.青年期調査(二十歳の健康チェック)は新型コロナウイルスの影響で実施が困難と思われるが、実施に向けて、質問表の作成、健診場所の確保、実施通達手段など行政等との調整を行う。対象者に対して、生活習慣(栄養調査、食生活、飲酒、喫煙、運動習慣、身長・体重等)、疾病既往の質問票による調査を実施する。メンタルヘルスについてはSES-Dを実施する。身長・体重は自記式とする。採血を実施して、生化学および血算、遺伝子解析用の生体試料を入手する。サンプルは、研究費で購入したフリーザーに保管する。4.遺伝子解析は肥満関連遺伝子(β3-AR,UCP1,β2-AR など)、アレルギー関連遺伝子の遺伝子型を同定し(DNAチップを設計済み)、出生コホートのデータセットに加える。
|