研究課題
産業現場で使用される金属微粒子やナノ素材などの粒子状物質は、吸入曝露により呼吸器に蓄積し、慢性炎症を介して線維化や発がんをもたらす。インジウム化合物は携帯電話の液晶画面などに使用され、曝露を受けた労働者では間質性肺炎、実験動物では肺癌を起こす。DAMP (Damage-Associated Molecular Pattern)とは、傷害を受けた細胞や死細胞から放出され、炎症反応を惹起する物質の総称であり、核蛋白のHMGB1やS100ファミリー蛋白などが含まれる。今年度の成果は以下の通りである。1)ヒト肺上皮由来A549細胞をインジウム化合物[酸化インジウム、インジウム・スズ酸化物(ITO)、塩化インジウム]で処理したところ、極めて低濃度でDNA損傷塩基8-ニトログアニンの生成を認めた。その過程には、細胞からHMGB1が放出され、近傍の細胞のリソソームに取り込まれてToll-like receptor 9を活性化し、一酸化窒素(NO)が産生される機構が関与することを明らかにした(Ahmed S et al. Sci. Rep. 2020)。2)酸化インジウムやITOを気管内投与したラットの肺組織では、S100ファミリー蛋白の発現が劇的に増加することを明らかにした(論文作成中)。以上の結果から、DAMPはインジウムによる呼吸器疾患に関与し、リスク評価指標として応用できる可能性が示唆された。3)長期にわたり経過観察しているインジウム肺患者の血清中のインジウム量と間質性肺炎の指標KL-6の数値は、経年的に減少しているが依然高値であった(論文作成中)。4)研究分担者らは、曝露を受けた労働者の血清インジウム濃度が肺組織のインジウム量と極めて高い相関を示すことを明らかにした(Hirata M et al. J. Occup. Health 2021)。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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https://www.med.u-fukui.ac.jp/laboratory/environmental/