研究実績の概要 |
昨年度まではライン化された培養細胞を用いて実験を行ってきたが、今年度は動物個体から調製した細胞を用いて研究を進めた。10週齢の雄性C57BLマウスより頸骨と大腿骨を摘出し、取り出した骨髄細胞を20 ng/mL mrM-CSFを添加した培地で培養することにより骨髄由来マクロファージ(Bone Marrow-Derived Macrophages, BMDMs)を得た。これまでに培養細胞を用いて確立した手法を用いて陽イオン界面活性剤によりインフラマゾーム形成が、BMDMsにおいても見られるかどうか調べた。また、GFPで蛍光標識したG3BP1を安定的に発現させたCHO-K1細胞を用いて、ストレス顆粒(Stress Granules, SGs)の形成過程を詳細に調べた。陽イオン界面活性剤である塩化セチルピリジニウムや塩化ベンザルコニウムは、陽性対照として用いたATPに比べて弱いながらもカスパーゼ1を活性化したが、インターロイキン1の活性化は検出されなかった。陽イオン界面活性剤によるインフラマゾームの活性化は、細胞障害性が認められる濃度ではじめてみられることから、陽イオン界面活性剤に特異的かつすべての細胞においてみられる反応ではないものと考えられる。一方、SGs形成は塩化セチルピリジニウムや塩化ベンザルコニウムを添加することにより顕著に見られたことより、陽イオン界面活性剤には細胞質の相分離を促進する作用があるものと結論した。肺上皮細胞であるA549とBEAS-2B細胞を用いて、陽イオン界面活性剤に曝露した細胞の形態学的変化と細胞周期に及ぼす影響を調べた。走査電顕を用いた観察により、A549細胞表面の稠密な微絨毛構造が、陽イオン界面活性剤により著しく損傷を受けることを見いだした。また、細胞周期を制御しているCdc6が低下することをウエスタンブロッティングの結果より明らかにした。
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