研究課題/領域番号 |
18H03049
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川上 浩司 京都大学, 医学研究科, 教授 (70422318)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 母子保健 / 学校保健 / 健康診断 / 公衆衛生 / ビッグデータ |
研究実績の概要 |
超高齢社会を迎えた日本では、高齢者の健康デジタル基盤の構築とその戦略的利活用の取り組みが進んでいるが、子どもの健康と発育を対象とした取り組みは遅れている。日本では、長年、学校保健法と母子保健法に基づいて悉皆で、乳幼児健診や学校健診を行ってきたが、所管の違いのためや紙帳票であるために、健診現場でのスクリーニングにしか用いられず、数年で破棄されてきた。我々は子どもの社会健康情報基盤の充実を目指し、全国自治体が法制度に基づいて取得してきた学校保健情報と乳幼児健診情報のデータベース化に取組んできた。 本研究では、「どのような胎内環境の子どもがどのような乳幼児になるのか、どのような乳児期の子どもがどのような学童期を迎えるのか」を明らかにする目的で、次の2点に取組んだ。 ① 全国各地の自治体と提携し、これまで破棄されてきた学校健診情報と母子保健情報を匿名化した上でデジタル化し、さらに両健康情報を連接することで、胎児期、乳幼児期、学童期という15年間の健康情報を紡ぐ大規模データベースの構築を進めた。令和2年1月時点で、連携自治体数は150、学校健診情報取得数は15万人、乳幼児健診情報取得数は5万人、乳幼児健診情報と学校健診情報を連接した数は8自治体3300人となっている。 ② 母子保健情報と学校健診情報を連接して構築したデータベースを活用し、胎内環境や乳幼児期の環境や因子とその後の成長過程や疾患との関連についての疫学研究に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
母子保健情報と学校健診情報を連接し、これらの連接を行い、8自治体約3300人の規模で0-14歳までの15年間の連接データセットを構築した。学校健診情報については全国150自治体15万人、乳幼児健診情報については11自治体4万人の情報を収集統合した。 データを活用した疫学研究としては、乳幼児の睡眠不足と齲蝕発生との関連について(Journal of Pediatrics誌)、妊娠期の飲酒習慣と3歳時聴覚所見との関連(Alcohol and Alcoholism誌)、妊娠期喫煙・生後の受動喫煙と3歳時聴覚所見との関連(Paediatr Perinat Epidemiol誌)について報告をした。現在、15年連接データセットを用いた研究も進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
既に150自治体15万人分のデータを取得している学校健診情報に連接するため、特に乳幼児健診情報について、自治体からの合意を得て精力的に収集する。学校健診情報と乳幼児健診情報を連接することにより、0歳から中学生までの15年間を追跡調査することができる子どもの健康情報データベースを拡充する。構築した15年間のデータセットを用いて疫学研究を実施し、乳幼児期の尿糖陽性糖尿病と学童期の腎炎の発症((i)幼児期の尿糖陽性の持続状況とその後の糖尿病の発症の関連、(ⅱ)子どもの健診時データ(身長、体重、尿検査等)と母体因子(基礎疾患・出産時年齢)や低出生体重児/早産児の有無の関連)についての検討を進める。
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