日本では、長年、学校保健法と母子保健法に基づいて悉皆で乳幼児健診や学校健診を行ってきたが、所管の違いや紙帳票であるために、健診現場でのスクリーニングにしか用いられず、数年で破棄されてきた。我々は子どもの社会健康情報基盤の充実を目指し、全国自治体が法制度に基づいて取得してきた学校保健情報と乳幼児健診情報のデータベース化に取組んできた。本研究では、「どのような胎内環境の子どもがどのような乳幼児になるのか、どのような乳幼児期の子どもがどのような学童期を迎えるのか」を明らかにする基盤を構築する目的で、次の2点に取組んだ。 ① 全国各地の自治体と提携し、これまで破棄されてきた学校健診情報と母子保健情報を匿名化した上でデジタル化し、さらに両健康情報を連接することで、乳幼児期、学童期を通じた健康情報を紡ぐ大規模データベースの構築を進めた。 ② 母子保健情報と学校健診情報を連接して構築したデータベースを用いて、胎内環境や乳幼児期の環境や因子とその後の成長過程との関連についての過去起点コホート研究に取り組んだ。具体的には、山口県防府市の母子保健情報と学校健診情報を連接したデータセットを用いて、母親の妊娠前体重や出生児の幼児期の体重と、成長後の肥満との関係を検討し、母親の肥満および出生児の3歳時点での肥満は、出生児の15歳時点での肥満と関連性が見られたが、出生時体重と15歳時点での肥満との間に統計的関連性は見られなかった。
|