研究課題/領域番号 |
18H03053
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
林 朝茂 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (10381980)
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研究分担者 |
佐藤 恭子 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (00381989)
上原 新一郎 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (00628696)
庄司 哲雄 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (40271192)
絵本 正憲 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (90275248)
由田 克士 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (60299245)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血液透析 / 体力測定 / 疫学 |
研究実績の概要 |
維持透析患者は、慢性期における多種の合併症が重要な課題であり、これらは生命予後にも関わる。本研究の目的は、維持透析患者を対象として、多種の合併症や生活の質の低下や生命予後に対して、1)定期的な運動習慣の評価、2)筋力、筋肉量、身体能力などの体力評価、3)栄養評価、これらが重要な危険因子であるかを包括的に検討するための前向きコホート研究を立ち上げることである。実施施設は、大阪府の医療法人秀悠会 (3施設)とその他の2施設(兵庫県1施設、大阪府1施設)である。本年度は体力測定を含めた登録時の調査を医療法人秀悠会 (3施設)で実施した。体力測定メニューは高齢者を多く含む維持透析患者が安全に実施できるメニューで以下である:①握力、②下肢伸展筋筋力、③下肢内転筋筋力、④下肢外転筋筋力、⑤立ち上がりパワー測定、⑥バランステスト、⑦開眼片足立ち、⑧歩行テスト、⑨椅子立ち上がりテスト。四肢と体幹の筋肉量の測定は、インピーダンス法で四肢と体幹を区分して測定可能した。下肢動脈硬化の評価にABI(Ankle Brachial Pressure Index)、TBI(Toe Brachial Pressure Index)、SPP(Skin Perfusion Pressure)の測定を実施した。同時に、QOLを含めた詳細な調査を実施した。本年度は約180名の登録を完了した。実際には、透析患者を対象とした場合、透析の開始時間、送迎の時間等の兼ね合いがあり一人当たりの実施には思いの外時間を要した。2月よりさらに2施設で登録時の調査開始を計画していた。しかし、COVID-19のため、2月より登録は困難な状況である。栄養調査に関しては、患者のベッドサイドで詳細な問診が必要でCOVID-19の状況下では実施が懸念される。今後、臨機応変に検討することとしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度~2020年度にかけて、維持透析患者を対象として、詳細な体力測定・筋力・筋肉量の測定結果と維持透析患者の多岐に渡る合併症との関係を包括的に明らかにすることを目的とした前向きコホート研究を立ち上げている。本年度は維持透析患者を対象に大阪府の秀悠会中川クリニック(本院、第2診療所、しんまち診療所)でのコホート開始時の登録を実施した。血液透析患者は高齢者が多くを占めており、こうした参加者が安全に試行可能であるメニューを参加者の協力を得て開発を行い実施しているが、透析前後の限られた時間で実施する必要があり、また、高齢者で一人一人時間を要し、送り迎えの時間も考慮せねばならず時間を要した。また、下肢の動脈硬化の検査にABI(Ankle Brachial Pressure Index)、TBI(Toe Brachial Pressure Index)、SPP(Skin Perfusion Pressure)の3種類の検査を複数回実施する必要がありこれも時間を要した。この状態でも、順調に大阪府の秀悠会中川クリニックの約180名の登録を完了できた。さらに、他の2施設で実施の段取りを進めていたが、COVID-19のために2月以降は登録を中断している。この理由は、体力測定と栄養調査は、患者さんとある程度の時間、近距離で接する必要性があるためである。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も継続して、透析患者を対象とした運動疫学を中心とした前向きコホート研究の立ち上げを行う。大阪府の秀悠会中川クリニックの3施設にては追跡調査を実施する。この他に2施設にて登録時の調査を実施する。(1)対象:四肢麻痺がなく介助無しで通院可能な維持透析患者で、体力測定に際して困難のない20歳以上を対象とする。2020年度は約120名の登録を目指し、総登録数300名を目標とする。(2)検査項目:生活習慣、QOL、睡眠、認知などの問診、身体測定、血圧測定、心電図、頸部エコー、放射線検査、血液検査、筋力測定(上肢と下肢の筋力)、四肢と体幹の筋肉量の測定、身体能力評価:10m歩行テスト、バランステスト、5回の立位-着座反復テストなどを実施する。(3)データ入力と管理:それぞれの施設と大阪市立大学大学院医学研究科産業医学において実施する。それぞれの透析施設から大阪市立大学大学院医学研究科産業医学に情報を提供する際は倫理指針に従い個人情報を管理する。(4)データの解析:解析用データファイルのクリーニングと作成は大阪市立大学大学院医学研究科産業医学にて行う。(5)追跡期間中のエンドポイント調査の調査項目は以下である:①脳血管障害、②虚血性心疾患、③心不全、④閉塞性動脈硬化症、⑤動脈瘤(腹部・胸部)、⑥高血圧症、⑦感染症、⑧入院、⑨手根管症候群、⑩サルコペニア、⑪転倒、⑫QOLなど。本研究の主目的である体力調査と栄養調査は、ともに調査時に参加者と近距離で接する必要がある。登録時の調査再開にはCOVID-19が落ち着く必要があること考慮し、登録目標数を300名とする。さらに、今回の栄養調査の部分はパイロット研究であり、COVID-19の状況を考慮し実施が時間的に困難な際には実施を臨機応変に検討する。その状況においても、多くの測定は実施でき本研究の主目的は十分に達成可能と考える。
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