研究課題/領域番号 |
18H03055
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
新井 康通 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20255467)
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研究分担者 |
小熊 祐子 慶應義塾大学, スポーツ医学研究センター(日吉), 准教授 (00255449)
漆原 尚巳 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (10511917)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 介護予防 / 高齢者 / 社会保険データベース / 健康長寿 / 身体活動 |
研究実績の概要 |
本研究の第一の目的である、介護予防法確立のための元気高齢者1,000名からなるコホートは川崎市の協力を得て2018年度内に確立された。2019-2020年度はもう一つの目的である個人に紐づく社会保障統合データベースをコホート研究がもたらす正確な臨床・医療データに融合することにより、要介護プロセスをかつてない確度で可視化するシステムの確立に取り組んだ。まず、研究参加者の同意に基づき、川崎市、神奈川県後期高齢医療保険連合から介護保険、医療保険レセプトデータを入手した(以下、社会保険データベース)。研究参加者の身体機能、身体活動、食事摂取、血液生化学データなど基礎調査時の評価項目(以下、コホートデータ)と社会保険データの突合が2020年度内に完了し、本研究のもっとも重要な目標であるコホート・社会保険データの融合データベースが確立された。 一方、2020年度は基礎調査から3年後の追跡調査を行い、認知機能、身体機能、フレイルなど社会保険データからは読み取れない変数の経年変化、および血液バイオマーカーの推移を観察する予定であったが、新型コロナ感染拡大により、会場招へい型の健康調査の実施は見送られた。これは本研究の対象者が平均年齢90歳に達する高齢者であり、感染された場合の健康被害の甚大さからやむを得ない決断と考えた。 会場調査に替わって、電話調査による健康調査、コロナ感染による緊急事態宣言下の高齢者の行動変化を調査した。この結果は高齢者の感染予防と自粛による身体不活動に対する対策を考えるために極めて有用なデータであり、国際雑誌に論文を発表した。 研究参加者1,000名から得られた血液サンプルからDNAを抽出し、マイクロアレイ解析も行った。60万SNPを解析し、生活習慣や血液バイオマーカーとのQTL解析を行い、結果を令和2年度日本老年医学会で発表し、現在、国際雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コホート・社会保険データ融合データベースは予定通り確立された。またゲノム解析も予定通り完了した。追跡調査のみ新型コロナ感染拡大により1年以上遅れが発生した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究によりコホート・社会保険データ融合データベース、ゲノム解析データが整備されたことは、超高齢者の介護予防を立案するうえで極めて重要な成果であると考えられる。追跡期間中にすでに50名以上の研究参加者がなくなっており、100名近くが要介護状態に移行している。これらのデータをアウトカム指標とし、要介護のリスク因子を身体領域、生活習慣領域、ゲノム領域から包括的に検証することが可能となる。 会場調査による追跡調査は認知機能や身体活動、血液バイオマーカーの経年変化を観察するうえで重要である。感染リスクに配慮した形で2021年秋以降に再開する予定である。 本研究による若手研究者の育成も重要な到達目標である。この点では若手医師1名が本研究の病歴データを解析し、多病とQOLの関連についての論文を投稿中である。また、別の若手医師1名も食事調査と身体組成の関連を解析し、論文を投稿する予定である。2021年度は医師以外の研究者にも解析に参加してもらい、学会報告、論文発表を行う予定である。
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備考 |
緊急事態宣言下における高齢者の身体活動や交流頻度などの行動変化についての論文がBMC Geriatricsに掲載されました。
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