研究課題/領域番号 |
18H03065
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
竹下 治男 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (90292599)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 核酸分解酵素 / DNase I / DNase II / DNase famaily / 遺伝子マーカー |
研究実績の概要 |
我々は、これまでの研究から、核酸分解酵素 DNase I の遺伝的多型がある種のがんや心筋梗塞等の疾患の新規な疾患感受遺伝子であること、あるいは核酸分解酵素 DNase II の遺伝的多型が自己免疫疾患やリウマチ等の疾患と相関をもつことなどを明らかにしてきた。本研究は応募者らの研究成果を基盤として、それら疾患の発症や診断に係る DNase I および DNase II を含めた核酸分解酵素 DNase family の病態遺伝および生理学的関与について多型性をベースとして解明することによって、DNaseを疾患の危険因子や診断マーカーとして確証することを研究目的としている。本研究は、あらたな個人識別マーカーとしての DNase に基づいた法医学的研究成果を臨床医学へ波及することを目論んでいる。遺伝子マーカー(DNase I、DNase II、DNase1L2およびDNase1L3など)に対する極めて鋭敏なモノクローナル抗体をさらに作成し、遺伝子マーカーの実際的な定量を可能とするELISA法を確立中であり、遺伝子マーカーの各相違部に由来する培養細胞由来蛋白質を免疫学的手法によって比較解析している。各々のヒト遺伝子マーカーに対する特異抗体も作製する。 既に様々な各種培養細胞、各種脊椎動物や解剖事例由来などからも臓器および体液を採取し、RNAを抽出、さらにcDNAを合成しており、各遺伝子に特異的なcDNAを検索し、統計学的に詳細な解析を加味しながら、死因への依存性を確認しているところである。特にDNase familyの活性低下と自己免疫疾患との関連、 DNase II が疾患感受性遺伝子として炎症性疾患に関与しているという知見、あるいは 遺伝子改変細胞を用いたDNase IおよびIIの発癌への影響の各型の差異の解明などをさらに行っている。。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては主目的が3つ存在しているが、そのうちのひとつである、下記目的1(1) 様々な民族および集団からDNAを継続的に採取する。2) RCP-RFLP法、site-directed mutagenesis法、single radial enzyme diffusion(SRED)法等によって、DNase I遺伝子内に分布する全非同義置換型SNP 約100座位について解析する。3) DNase I1型および2型に相当するcDNAを導入した哺乳類細胞発現ベクターを作成し、各種細胞などで発現させる。発現したDNase Iはタンパク質精製装置を用いてそれぞれ精製する。4) 精製したDNase I1型および2型酵素について、DNase I1型と2型の生化学的相違(比活性、安定性、蛋白分解酵素・阻害物質抵抗性など)を解明する。5) 前項で精製したDNase I1型及び2型を抗原として、モノクローナル抗体を作製する。)についてほぼ完成しつつあるため。また目的2のためのサンプルなどの収集状況もほぼ予定どおりであり、今後の目的2および目的3への移行も段階的に予定通り可能であろうと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究推進のために、以下に記載する目的2と3を施行していく。 研究目的2として、収集の進んでいる各種の得られた血液試料について、DNA を抽出し、PCR-RFLP 法によりDNase II SNP 型を判定すし、死因および慢性関節リウマチ、動脈硬化、心肥大等の既往と DNase II SNP 型の相関を随時検討する。また、 1型および2型DNase I哺乳類細胞発現ベクターをCos-7やHepG2細胞など培養細胞に遺伝子導入し、それぞれの安定発現細胞株を樹立する。さらに、構築した安定細胞株を使用し、様々なアポトーシス誘導剤によって処理した後のアポトーシスの発生頻度の測定や発生形態を観察しながら、ミトコンドリアの膜電位の変化やAnnexinVで細胞膜の変化などを蛍光顕微鏡または共焦点レーザー顕微鏡で観察する。、activated caspaseの活性測定キットを用いて、それらの活性を測定する。研究目的3として、1型DNase Iを発現している膵臓がん由来QGP-1細胞を用い、CRISPRによるゲノム編集作業を行い、2型DNase I遺伝子に置換したノックイン細胞を樹立作製する。また、DNase I 1型及び2型にGFP蛋白を連結したキメラ変異体を作製し、培養細胞などに導入、共焦点レーザー顕微鏡を用いてそれらの細胞内局在、及びアポトーシスやストレス化におけるDNase Iの局在変動を調査する。さらに、 DNase I 1型および2型に対するモノクローナル抗体がアポトーシスを阻止するかどうかを決定する。最後に、アポトーシス誘導前後におけるDNase I遺伝子発現の変動をDNase I産生細胞のQGP-1細胞を用いてreal-time PCR法によって解析する。アポトーシス誘導後におけるマイクロアレイを用いたトランスクリプトーム解析によって、遺伝子発現への多型性の影響を調査する。
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