研究課題/領域番号 |
18H03065
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
竹下 治男 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (90292599)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DNaseI / SNPs / 核酸分解酵素 / Dnase family / 遺伝子多型 / 疾患感受性 |
研究実績の概要 |
DNase I 遺伝子内における一塩基多型(SNP)のような遺伝的変異体は、酵素活性を消失・低下させ、自己免疫機能不全に対する遺伝的要因となっていると考えられる。我々は、missenseやnonsense変異を引き起こすSNP、indel変異のような遺伝的変異が活性レベルに影響を与えるfunctional variantであるか調査・解析した。1) 各SNP、indelのminor alleleに対応するアミノ酸置換型DNase Iを作成し、その酵素活性を定量した。2) 異なる14集団(n=1764)について、PCR-RFLP法によって各missense SNPの遺伝子型を解析した。3) 各missense SNPの酵素活性への影響をPolyPhen-2等によってin silico解析を行った。4)日本人およびドイツ人について、copy number variations (CNVs)を分析した。18 missense SNPs、7 nonsense SNPs、9 indel変異において酵素活性の消失が認められた。全ての集団においてp.Gln244Argのみに多型性が認められ、p.Arg2ser、p.Tyr117Ser、p.Gly127Argはアフリカ人とコーカシア人にのみ多型が認められた。酵素活性消失がみられた18 SNPsのほとんどがin silico解析によってdamaging/deleteriousと判定され、高い予測精度が確認された。日本人及びドイツ人のどちら集団にも2 diploid copy numberのみが認められた。これらのDNase Iの酵素活性消失・低下を引き起こす変異体の解析結果は、自己免疫疾患等の遺伝的危険因子を検討する上で有益であると考えられた。 Sci Rep 9, 13660, 2019.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の昨年度課題の方法として下記予定であったが、そのほとんどを遂行している。 当初予期していない結果や機器の不具合によるのかなと思われるデータの不統一などが、認められており、その点に関しては、少し回り道をしているが、共同研究者や関連学内の 研究者の先生に協力を仰ぎ、他の実験やデータの解析課程や結果を参考させていただいており、その途上で、どこがおかしかったのかを突き止めるだけではなく、新たな研究進捗のためのヒントや参考になる知見も偶然得ることができた。その点においてはpreliminaryな実験をすこし、研究計画の範囲内で行っている。1) 本学で実施される法医解剖・検案のご遺体から血液を採取する。その際、死因、死後経過時間、年齢、性別、既往歴の有無等の情報を得る。なお、本研究開始以前に本学倫理委員会の許可を得る予定である。2)本学附属病院内科に依頼し、慢性関節リウマチ、動脈硬化、心肥大患者の血液試料を提供していただく。その際、患者の臨床背景等の情報を得る。なお、本研究開始以前に本学倫理委員会の許可を得る予定である。3) 得られた血液試料について、DNA を抽出し、PCR-RFLP 法によりDNase II SNP 型を判定する。死因および慢性関節リウマチ、動脈硬化、心肥大等の既往と DNase II SNP 型の相関を随時検討する。4) 1型および2型DNase I哺乳類細胞発現ベクターをCos-7やHepG2細胞など培養細胞に遺伝子導入し、それぞれの安定発現細胞株を樹立する。5) 4項で構築した安定細胞株を使用し、様々なアポトーシス誘導剤によって処理した後のアポトーシスの発生頻度の測定や発生形態を観察する。6)ミトコンドリアの膜電位の変化やAnnexinVで細胞膜の変化などを蛍光顕微鏡または共焦点レーザー顕微鏡で観察する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究計画通り下記を推進する。また、現在までの進捗状況に記載したとおり、共同研究者や関連学内の研究者の先生に協力を仰ぎ、他の実験やデータの解析課程や結果を参考させていただいており、そこから派生する関連研究方策を取り入れていきたい。得られた血液等の体液試料について、SRED 法を用いて血清 DNase II 活性を定量する。死因および慢性関節リウマチ、動脈硬化、心肥大等の既往と血清 DNase II 活性の相関を随時検討する。1) 死後経過時間等の影響を調べるため、異なる温度や添加剤の添加などの様々な条件下に放置した血液試料中の DNase II 活性変動を精査する。この結果に基づき、血清 DNase II 活性定量に供する法医学的試料の保存方法・採取法等を確立する。 2) 得られた血液試料および DNA について、慢性関節リウマチ、動脈硬化、心肥大を有するサンプルに関して、年齢、性、素因や既往の有無等に分類し、それぞれの DNase II 型および血清DNase II 酵素活性との間の相関を統計学的に解析する。 3) 野生型のヒト DNase II cDNA を鋳型として Site-directed mutagenesis 法により変異型発現ベクターを作成する。4) 変異型発現ベクター(野生型および変異型)を COS-7、HepG2 細胞などの細胞に遺伝子導入後、培養上清に分泌された変異型 DNase II を回収する。5) 変異型酵素の精製方法について検討する。DNase II における生化学的性状および機能解析、変異型発現ベクターの作成、遺伝子導入による変異型 DNase II の発現、変異型 DNase II の精製方法の確立、精製後の野生型・変異型 DNase II 酵素活性の解析、生型・変異型 DNase II の生化学的性状の精査および機能解析等を行う。
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