研究課題/領域番号 |
18H03067
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
近藤 稔和 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70251923)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 児童虐待 / 胸腺 / ストレス / アポトーシス / 遺伝子欠損マウス / ケモカイン / サイトカイン / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
近年,児童に対する虐待事案並びに虐待が疑われる事案が急速に増加し,大きな社会問題となっており,臨床医学・法医学を問わず実効性のある被虐待児の診断および虐待防止対策が急務とされている.法医学分野において,新旧多発する外傷,異常な不潔,他に原因のない栄養不良に加え,著明な胸腺萎縮が虐待を疑う所見とされている.この胸腺萎縮は,ストレス環境下では胸腺のリンパ球のアポトーシスが誘導されることによって生じると考えられており,その過程において サイトカイン・ケモカインの関与が示唆されている.そこで今回,マウスを用いてストレス暴露下における胸腺萎縮におけるサイトカイン・ケモカインの役割を解析し,マウス実験で得られたの結果を剖検試料に応用することによって,法医学的に虐待の補助的診断および虐待期間の推定法の確立,臨床医学分野においては虐待の証明方法の確立を目指すものであり,医学的且つ社会的に極めて有意義な研究と考える. マウスの拘束ストレスモデル用いて,胸腺が退縮することを明らかにした.さらに,胸腺のT細胞に発現しているケモカインレセプターに着目し,ケモカインレセプターの1つCCR5に着目した.そこで,CCR5遺伝子欠損マウスと野生型マウスを拘束ストレスに供したところ,野生型マスでは胸腺重量が高速前の約25%程度にまで減少していた.一方,CCR5遺伝子欠損マウスでは,胸腺退縮は観観察されたが,重量の減少は約50%程度にとどまっていた.このことは,拘束とレスによる胸腺退縮が野生型マウスと比較してCCR5遺伝子欠損マウスでは抑制されたことを意味するものである.拘束ストレスでは,ストレス応答として副腎重量が増加することが知られている.野生型マスでは拘束ストレスにより,副腎の重量が有意に増加したものの,CCR5遺伝子欠損マウスでは副重量は有意な変化を認めなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの進捗状況として,CCR5遺伝子欠損マウスを用いるため,マウスの繁殖が必要不可欠であるが,特に支障なく,CCR5遺伝子欠損マウスは順次繁殖している.また,その他の遺伝子欠損マウスについても,順調に繁殖していることから,次年度の以降の研究に何ら支障はない.また,ヒトの胸腺資料についても,適宜収集している.
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今後の研究の推進方策 |
今後,CCR5を介したシグナルがどのように胸腺細胞のアポトーシスを含め胸腺萎縮のメカニズムに関与しているのかを明らかにするためにCCR5のリガンドケモカインとしてCC chemokine ligand 3 (CCL3), CCL4およびCCL5の3種類が存在することから,最も胸腺萎縮に関与するケモカインの機能と動態を解析する準備を進めている.さらにその他のケモカインレセプターについても遺伝子欠損マウスを用いて,ストレスによる胸腺退縮への関与を検討する.
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