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2020 年度 実績報告書

胸腺萎縮の分子メカニズム解明とその法医学的応用:児童虐待撲滅を目指して

研究課題

研究課題/領域番号 18H03067
研究機関和歌山県立医科大学

研究代表者

近藤 稔和  和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70251923)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード児童虐待 / 胸腺 / ストレス / アポトーシス / 遺伝子欠損マウス / ケモカイン / サイトカイン / バイオマーカ
研究実績の概要

胸腺退縮は被虐待児の特徴の一つであるとされ,虐待によるストレスによって胸腺のリンパ球にアポトーシスが誘導されることによって生じると考えられている.そのアポトーシスの過程においてサイトカイン・ケモカインの関与が示唆されている.そこで,マウスにおけるストレス誘発性胸腺退縮におけるサイトカイン・ケモカインの役割を解析する.
野生型マウスで1日1時間拘束ストレスにさらすと,胸腺が退縮することを明らかにした.さらに,胸腺のT細胞に様々なケモカインレセプターが発現してることに着目した.ケモカインレセプターの1つCCR5に着目した.そこで,CCR5遺伝子欠損マウスと野生型マウスを拘束ストレスに供したところ,両マウスで胸腺が退縮したがCCR5遺伝子欠損マウスでは,胸腺退縮に対して抵抗性を示した.実際,胸腺細胞のアポトーシス細胞はCCR5遺伝子欠損マウスで減少し,Fas及びFasリガンドの遺伝子発現が抑制されていた.このことから,CCR5を介したシグナルがFas及びFasリガンドの遺伝子発現を制御しているものと考えられた.次に,CX3CR1ケモカインレセプターに着目し,CX3CR1遺伝子欠損マウスを同様に拘束ストレスに暴露した時の胸腺の変化についてみたところ,CX3CR1遺伝子欠損マウスでは胸腺退縮の程度が軽減していた.また,胸腺細胞のアポトーシスについても,野生型マウスでは胸腺細胞の多数のアポトーシス細胞を認めたが,CX3CR1遺伝子欠損マウスでは,アポトーシス細胞の数が明らか減少していた.さらに,副腎皮質ホルモンについては,CX3CR1遺伝子欠損マウスに比べて野生型マウスでは優位に増加していた.すなわち,CX3CR1遺伝子欠損マウスでは副腎皮質ホルモンを抑制することでストレス誘発性胸腺退縮に対して抵抗性を示すことが明らかになった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの進捗状況として,CCR5遺伝子欠損マウスを用いるため,マウスの繁殖が必要不可欠であるが,特に支障なく,CCR5遺伝子欠損マウスは順次繁殖している.また,CX3CR1遺伝子欠損マウスについても,検討が順調に進み,基礎的データを収集後,さらなる分子メカニズムの検討のとりかかっている.加えて,遺伝子欠損マウスについても,順調に繁殖していることから,次年度の以降の研究に何ら支障はない.また,ヒトの胸腺資料についても,適宜収集している.

今後の研究の推進方策

今後,CCR5を介したシグナルがどのように胸腺細胞のアポトーシスを含め胸腺萎縮のメカニズムに関与しているのかを明らかにするためにCCR5のリガンドケモカインとしてCC chemokine ligand 3 (CCL3), CCL4およびCCL5の3種類が存在することから,最も胸腺萎縮に関与するケモカインの機能と動態を解析する準備を進めている.さらに,CCR5を介したシグナルと副腎皮質ホルモン産生の関係を検討する.CX3CR1の役割について,他のサイトカインを測定し,CX3CR1とアポトーシスの関係についての分子メカニズムを明らかにする予定である.特に,CX3CR1レセプターを介したシグナルとストレスホルモン産生の関係について,分子メカニズムを解析する.その他のケモカインレセプターについても遺伝子欠損マウスを用いて,ストレスによる胸腺退縮への関与を検討する.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] The involvement of CX3CR1 in stress-induced thymic atrophy2021

    • 著者名/発表者名
      Kondo T, Ishida Y, Kuninaka Y, Nosaka M, Ishigami A, Kawaguchi M,
    • 学会等名
      100th Annual Meeting of German Society of Legal Medicine
    • 国際学会

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公開日: 2021-12-27  

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