研究課題/領域番号 |
18H03070
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山村 健介 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90272822)
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研究分担者 |
定方 美恵子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00179532)
白石 葉子 三重県立看護大学, 看護学部, 教授 (10305500)
江川 広子 明倫短期大学, 歯科衛生士学科, 教授 (10310492)
内山 美枝子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (10444184)
小野 高裕 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30204241)
黒瀬 雅之 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40397162)
岡本 圭一郎 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (50382338)
佐藤 大祐 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (70778703)
佐々木 誠 岩手大学, 理工学部, 准教授 (80404119)
長谷川 真奈 新潟大学, 医歯学系, 特任助教 (90779620)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 嚥下 / むせ / 機械学習 / 筋電図 / 介護 |
研究実績の概要 |
近年、要介護者・脳卒中有病率は増加の一途を辿り、摂食・嚥下障害を有したまま自宅退院となる患者が増加している。そのため、有病者の誤嚥性肺炎の重症化を防ぐために、在宅でのアセスメントの充実による早期発見・予防へと移すことが求められている。我々の研究目的は、アセスメントで用いられる「むせ」の際に得られる生体信号を基に「むせ」を予測し、予測された「むせ」が生じる前に外部刺激を加えることで円滑な嚥下遂行させるシステム開発のための基本データを得ることである。2018年度は、「むせ」が生じない正常嚥下時の筋電図を生体信号として用い、嚥下を予測するアプリケーションの開発を目的に、健常者における負荷嚥下モデルを用いた生体機能計測と機械学習用プラットフォームの構築を行った。負荷嚥下モデルとして、当初体位(体幹および頭部の角度)を変化させて嚥下負荷を変化させ、生体データおよびVASスケールを用いた主観的な嚥下の難易度を被験者から取得し、データの蓄積を行う予定であった。しかし健常者においては体位変化では嚥下難易度を十分に高めることは困難で、主観的な嚥下難易度の高い生体データを十分に得ることが不可能であることがわかった。そのため、体位変換に加え嚥下試料の物性を変化させることで嚥下困難度を制御することとし、凝集性の異なる液体10 ccを異なる体位で嚥下した際の舌骨上筋からの表面筋電図、咽頭部に設置した大気圧センサからの咽頭内圧、「飲み込み易さ」の官能評価を同時記録し、嚥下時の咽頭内圧ピークから前0.7秒及び後0.4秒の計1.1秒間における筋電図データを入力層-隠れ層-出力層が線形結合した多層ニューラルネットワークモデルで解析・機械学習を行った。結果、機械学習に用いたデータに対しては約90%の正答率が得られたのに対して、学習に用いていないデータに対する正答率は約50%前後であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に推移している。第一に、体位変換に加え嚥下試料の物性を変化させることで嚥下困難度を制御する負荷嚥下モデルを確立することができた。加えて嚥下時の生体信号を用いて嚥下を評価するための機械学習用プラットフォームを構築する上で、嚥下時の咽頭内圧ピークから前0.7秒及び後0.4秒の計1.1秒間における筋電図データが有用であること、解析対象には、電極貼付位置や接触抵抗の影響を受けやすい筋活動量ではなく、筋電図の周波数が有用であることが明らかになった。しかし、機械学習に用いたデータでは約90%、用いていないデータでは50%と正答率に差があることから、構築したプラットフォームでは過学習が生じる可能性があり、さらなる改善が必要であると思われた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き健常ボランティアを対象に、健常者における負荷嚥下モデルを用いた生体機能計測と機械学習用プラットフォームの構築およびその検証を行う。筋電図などの生体信号と今後のタグ付けとして用いるためのVASスケールを用いた主観的な嚥下の難易度を被験者から取得する。機械学習の精度向上のために多層ニューラルネットワークと畳み込みニューラルネットワークの二つを組み合わせたモデルを用いた機械学習用プラットフォームを構築し、その有効性を検討する。
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