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2019 年度 実績報告書

看護学生の道徳的感受性の全国調査と育成のための教育プログラムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 18H03074
研究機関名古屋大学

研究代表者

太田 勝正  名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (60194156)

研究分担者 八尋 道子  佐久大学, 看護学部, 教授 (10326100)
滝沢 美世志  中部大学, 看護実習センター, 助教 (20736269)
夏目 美貴子  中部大学, 生命健康科学部, 講師 (60434578)
山田 聡子  日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 教授 (80285238)
前田 樹海  東京有明医療大学, 看護学部, 教授 (80291574)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード道徳的感受性 / 看護学生 / 看護教育 / 倫理的問題
研究実績の概要

看護学生への看護倫理に関する教育の効果を把握するために3つの調査を実施した。1)授業前後のインタビュー調査、2)授業前後の道徳的感受性質問紙看護学生版第2版(J-MSQ-ST第2版)を用いた評価、3)新たな教育法の検討とトライアル。
1)の調査の結果、6名の学生(全員女性)を対象としたインタビュー調査から道徳的感受性に関して6つのカテゴリーが抽出された。「看護者の果たすべき責務への気づき」、「約束の不履行に関する疑問」、「身体拘束の妥当性への疑問」については授業前後の変化が見られなかったが、「患者の感情への理解」が授業後に見られなくなる一方で、新たに「看護学生の能力の限界」、「身体拘束をする看護者の状況への理解」という2つのカテゴリーが授業後に抽出された。
2)の87名の学生に対するJ-MSQ-ST第2版を用いた調査結果は、道徳的感受性を構成する「道徳的強さ」、「道徳的な気づき」、「道徳的責任感」のうちの「道徳的強さ」と「道徳的な気づき」の2つの因子の得点が授業後に有意に低くなっていた。因子得点に差がなかった「道徳的責任感」についても、因子を構成する2項目のうち1項目で得点が有意に低くなっていた。これらの結果は、学生の無垢な道徳的疑問が学年が進むとともに見られにくくなるという先行研究の結果を裏付けていた。
道徳的感受性の涵養のために、通常の講義でよく用いられる一般的な倫理問題事例を学生が実際に経験した倫理・道徳的な課題に置き換えた模擬授業を設計し、試行した。残念ながら、参加者数が少なくその効果を統計学的に評価できなかったが、一般的倫理問題事例よりも、自らが経験した道徳・倫理の課題を含む事例の方がより深いディスカッションが展開され、学生の看護倫理・道徳への関心が高まる可能性が示唆された。2020年度は事例の選択法などを工夫し、その効果を測定し、モデル授業案の検討を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績の概要に示したように、看護倫理の授業の改善のための模擬授業については、参加者が限られていたために、学生自身が経験した倫理・道徳的問題に関する事例に基づくディスカッションがどの程度その後の道徳的感受性に影響するのかについての効果を定量的に評価することはできなかった。しかし、道徳的感受性が看護倫理の知識獲得や実習を通じた現場の困難への遭遇などにより、一時的に(あるいは、一旦は)低下するという事実を多角的な評価により明らかにすることができた。これらの結果をもとに、今後の教育内容、教育法の改善についての方向性を明らかにすることができており、全体としては概ね順調に研究を進めることができたと評価する。

今後の研究の推進方策

2018年度および2019年度の研究にて、看護学生が抱える道徳的問題と倫理的な問題の実情、ならびに、倫理的感受性と道徳的感受性の関係についても道徳的感受性尺度看護学生版(MSQ-NST)第2版等を用いた定量的な調査研究により明らかにすることができた。また、看護倫理の講義が学生に与える倫理観、道徳観への影響についても、インタビュー調査により明らかにすることができた。さらに、それらの結果を踏まえて、看護学生への道徳感、倫理観の涵養のための教育プログラムを一部試作・試行し、教育上の課題の一端も明らかにすることができた。
2020年度は、これらの結果を踏まえた教育プログラムの検討と改良を行う。
具体的には、分担研究者らが担当している実際の看護倫理に関する授業をもとに、より効果的な教育内容、教育法を導入したプログラムを構築し、その試行を行う。ただし、現時点でまだ、Covid-19の蔓延による休講等が続いており、どの看護教育機関も時間割、カリキュラム上の対応に追われている。したがって、試作した教育プログラムの試行については、それぞれの分担研究者が所属する教育機関で無理のない範囲で行わざるを得ないと考える。
得られた成果は、学会等を通じて公表するとともに、検討会などを企画し、多くの看護教育者からより良いプログラムとするための意見を求める予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] 患者尊厳測定尺度日本版(J-PDS)短縮版の開発2019

    • 著者名/発表者名
      森 智子、太田勝正
    • 雑誌名

      日本看護倫理学会誌

      巻: 11 ページ: 75-82

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Concept synthesis of dignity in care for elderly facility residents2019

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa Nanako、Ota Katsumasa
    • 雑誌名

      Nursing Ethics

      巻: 26 ページ: 2016~2034

    • DOI

      10.1177/0969733018824763

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Development of the Inpatient Dignity Scale Through Studies in Japan, Singapore, and the United Kingdom2019

    • 著者名/発表者名
      Katsumasa Ota, Jukai Maeda, Ann Gallagher, Michiko Yahiro, Yukari Niimi, Moon F. Chan, Masami Matsuda
    • 雑誌名

      Asian Nursing Research

      巻: 13 ページ: 76-85

    • DOI

      10.1016/j.anr.2019.01.008

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Organizational support to reduce moral distress and cultivate moral resilience2019

    • 著者名/発表者名
      Katsumasa Ota, Makiko Yamamoto, Nanako Hasegawa, Yukari Niimi
    • 学会等名
      The 20th International Nursing Ethics Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Cross-cultural and research participant’s perceptions of the characteristics of dignity in care for the elderly in residential facilities2019

    • 著者名/発表者名
      Nanako Hasegawa, Katsumasa Ota
    • 学会等名
      The 20th International Nursing Ethics Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 道徳的苦悩の軽減と道徳的回復力の育成への組織的支援に関する看護師長の認識2019

    • 著者名/発表者名
      山本麻紀子、太田勝正
    • 学会等名
      日本看護倫理学会第12回年次大会

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公開日: 2021-01-27  

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