研究課題/領域番号 |
18H03095
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
法橋 尚宏 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (60251229)
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研究分担者 |
小林 京子 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 教授 (30437446)
深堀 浩樹 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 教授 (30381916)
池田 真理 東京女子医科大学, 看護学部, 教授 (70610210)
濱本 知寿香 大東文化大学, 経済学部, 准教授 (00338609)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 家族同心球環境理論 / 介入研究 / 家族臨地推論 / 家族支援 / 家族相談室 |
研究実績の概要 |
家族症候として,“家族レジリエンスの発達不足”“イベントに対する不適応反応を生じる家族ビリーフの存在”“スピリチュアルペインによる家族の苦悩”“家族の経済危機”などをとりあげた.国内外の文献のシステマティック・レビューなどから,家族症候の影響因子(危険・原因/促進因子,予防・阻止/抑制因子,状況依存性因子)と家族支援策に関するエビデンスを抽出した.倫理審査委員会の承認後,国内外のさまざまな家族に半構造化面接調査を実施し,逐語録の内容分析を行った.さらに,国内外で長期間にわたる家族エスノグラフィーを実施し,家族症候の影響因子と家族支援策を明らかにした. 例えば,家族レジリエンスに関しては,文献16本(22事例)の分析,日本の島嶼部で暮らす28家族への半構造化面接調査を実施し,これらを統合したDirect Contents Analysisにより,“同じ境遇のひとと関わることができる”“家族が共通した目標をもつことができる”“家族員の過去の同様の経験を活用できる”など,14カテゴリが明らかになった.家族レジリエンス不足のスクリーニング尺度SS-IFR(Screening Scale for Insufficiencies in Family Resilience)を開発中である. その他として,インドネシアにおいて子育てをしている683家族から得た質問紙の分析,中国においてうつをもつ高齢者がいる136家族から得た質問紙の分析などを踏まえて,家族症候の影響因子と家族支援策に関するエビデンスを抽出した.なお,9種類の日本語の家族アセスメントツールは,英語,中国語(簡体字),中国語(繁体字),インドネシア語,フィリピン語に翻訳し,そのリガーを確保した後,ウェブサイトで公開した. これらの成果は,学会誌での公表,学術集会での演題発表・交流集会・基調講演などを行い,国内外に発信した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
日本,中国,インドネシア,フィリピンなどにおいて,グローバルな研究が実施できた.日本では,都心部,地方部,島嶼部に加え,山間部を研究フィールドとした.予定していた以上の家族症候について,文献検討と面接調査,家族エスノグラフィーを実施した.フィリピンにおける長期間の家族エスノグラフィーにより,家族同心球環境理論(Concentric Sphere Family Environment Theory,CSFET)の機能性項目の進化,家族環境地図(Family Environment Map,FEM)を改訂した.家族ビリーフシステム理論(Family Belief Systems Theory,FBST)を提唱し,“Hohashi, N. (2019). A Family Belief Systems Theory for transcultural family health care nursing. Journal of Transcultural Nursing, 30(5), 434-443.”として公表した.日本人として初めてCaritas Coachの資格を取得し,家族ケア/ケアリング理論(Family Care/Caring Theory,FCCT)の実践体系を強化した.帰納的推論過程によるCSFET式家族看護過程(SFET-based family nursing process),演繹的推論過程による家族症候の影響因子スキーマと家族臨地推論(Schema of influencing factors for family symptoms/signs and clinical reasoning for family)を改良し,それぞれのケースシートを開発した.これらの成果は,多数の論文,書籍,学術集会などで公表しており,当初の計画以上に研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
とくに日本の山間部と島嶼部,フィリピンをフィールドとして,グローバルな研究を継続する.新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ,すでにヴァーチャル家族インタビュー/ミーティングを実践し,ホワイトボードを活用した家族環境地図の作成などのITリテラシーを獲得し,家族ケア/ケアリングにも有効であることを確認しており,これを活用する.家族支援の実践知・経験知,エビデンスの収集,家族症候別の家族ケア/ケアリングに焦点をあて,家族同心球環境理論(Concentric Sphere Family Environment Theory,CSFET)にもとづいた家族環境アセスメントモデル(Family Environment Assessment Model,FEAM)と家族環境ケア/ケアリングモデル(Family Environment Care/Caring Model,FECCM)が,研究と家族ケア/ケアリングに有効であることを確認する.とくに,世界最先端の家族支援を行うために開設した家族看護クリニックである“CSFET式ナースの家族お悩み相談室”の活動を拡大し,外来家族看護に加え,国内外各地における訪問家族看護,ビデオ会議ソフトウェアを使用したオンライン家族看護を実践を強化する.また,家族同心球環境理論研究会において,オープンなセミナーやワークショップなどを常時開催しているので,この機会を最大限に活用し,新たな家族ケア/ケアリングの方法を開発する.新しく提唱した家族ビリーフシステム理論(Family Belief Systems Theory,FBST)は世界的に反響をよんでおり,とくに“イベントに対する不適応反応を生じる家族ビリーフの存在”に焦点をあて,治療的コミュニケーションのために,自己実現と他己実現,中医看護,サウンド治療,瞑想などの新たな方法を検証し,確立する方針とする.
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