研究課題
COVID-19の拡大で調査が研究代表者の所属機関内に限定され、小児がん経験者に焦点を当てて以下の研究を行ってきた。小児がん経験者のコホート研究を実施し、69名からの包括健診データと質問紙調査を収集した。バイオサイコソーシャルモデルを用いて、常勤職または大学進学に対する身体状態、心理社会状態の関連を明らかにした。多変量解析の結果、IQ (OR=1.110; p=0.004)、成人医療への準備性(OR=0.702; p=0.028)、家族機能の適応 (OR=1.815; p=0.027)が関連した。この結果から認知機能による困りの解決、家族機能、経験者のレディネスを高める支援が就労・進学に対する支援となることが示唆された。日本語文献を用いて小児がん患者と経験者の意思決定の概念分析を実施し、先行要件(意思表明の促し、親のレディネス、親子の成熟、変わり目のキュー、主体性への気づきの促し、自立、説明)、属性(自分らしさ、セルフケア、治療への同意、治療の選択、将来の選択、思いの表出)、帰結(主体性、その子らしい生活、サポート資源の確保、揺らぎ)が見出された。小児がん経験者の就労に関する主観的課題と障壁に関するスコーピングレビューでは、経験者が抱く課題と障壁を明らかにすることを目的にし、小児期発症で晩期合併症のある小児がん経験者に特徴的な体験(親からの情緒的自立・自己開示)、AYA世代発祥の経験者に特徴的な体験(義務教育以降の教育での困難と葛藤)、経験者共通の体験(健康状態と晩期合併症による職業選択の難しさ、療養のための留年、退学とそれに伴う挫折感、影響を与えてくれる医療者との出会い、正常性を確認するための資格取得、就学・就労の判断基準)が見出された。これらから義務教育以降の学業を支えること、ロールモデルとの出会いの機会づくり、良好な身体状態を維持することへの支援が重要と考えられる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。