研究課題/領域番号 |
18H03113
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森山 美知子 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (80264977)
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研究分担者 |
RAHMAN MDMOSHIUR 広島大学, 医系科学研究科(保), 准教授 (10796056)
Ashir Ahmed 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (30457444)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高齢者看護学 / 地域看護学 / 疾病管理 / 高血圧 / バングラデシュ |
研究実績の概要 |
本研究は、バングラデシュの研究機関である国際下痢症研究センターとの共同研究プロジェクトである。代表的な非感染性疾患である高血圧の疾病管理について、我々がこれまで構築し、成果を実証してきた慢性疾患管理の手法を技術転用するもので、バングラデシュの高血圧患者の意識、健康リテラシー、行動の変化を高めるために、次の3つの研究プロジェクトを実施している。 研究実施地域は、Mirzapur sub-district of Tangail district of Bangladesh。 (1)疫学調査:地域において、高血圧が主たる危険因子である慢性腎臓病(CKD)の発症率を調査した研究はバングラデシュにはないことから、これを開始した。上記地域に構築されたサーベイランスシステムを活用して、18歳以上の住民928人を登録し、血液・尿検査を実施し、有病率を判定している。COVID-19で検体採取が中断しているが、2020年前半には終了する予定である。 (2)介入研究:高血圧患者に対して、モチベーションインタビュー技術(家庭訪問)と遠隔コミュニケーションツール(携帯電話でのショートメッセージ)を使用して、減塩と高血圧に関する自己管理教育(5ヶ月のプログラム)を提供した(無作為化比較対照試験)。2019年7月に介入は終了した。420人の参加者を登録し(介入群:209人,対照群:211人)、412人が終了した。主要評価項目の減塩の行動について、両群共に統計的有意に改善した。副次評価項目である実際の塩分摂取量、血圧やQOLも有意に改善した。しかし、予想に反して、対照群の改善率が高かった。結果については、現在、投稿中である。 (3)上記を実施するために、コミュニティ・ヘルスケア・ワーカー(CHW)とファミリー・ヘルス・ナース(FHN)を育成している。2019年度は4名を広島大学に招聘し、7日間の教育を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高血圧の介入研究については終了し、現在、主要評価について論文を投稿中である(対象者のリクルートが順調に進んだことから、予定よりも早く終了)。また、本研究については、すでに3本の研究論文が採択されている。一方で、慢性腎臓病(CKD)の疫学調査については、2月末までは順調に経過したが、COVID-19の感染拡大の影響を受け、3月以降の調査は中止されている。外出の禁止・自粛の解除をもっての再開となるが、現在、先行きが不透明の状況にある。希望的予測では、2020年6月から徐々に再開できるのではないかと考えている。同じ理由により、コミュニティ・ヘルスケア・ワーカーやファミリー・ヘルス・ナースの養成研修(広島大学への招聘)も、延期または中止となる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
・高血圧の介入研究については、主要評価について、主論文を発表し、続けてサブ解析に関する論文も順次、国際誌及び国際学会で発表する計画である。さらに、この効果(減塩の行動変容)について、共同している研究機関とともに、地域への普及を図る計画である。バングラデシュ政府にも報告し、政策的に拡大を狙う。 ・慢性腎臓病(CKD)の疫学研究については、残りのデータ収集を終え、バングラデシュの地域のCKDの有病率を算出する。また、このデータを用いて、バングラデシュにはまだない腎機能の計算式を構築する計画である。さらに、CKDと判定された住民を対象に、教育介入研究を実施する計画である。 ・ファミリー・ヘルス・ナースの養成については、2019年度に広島大学で研修を受けた看護師(バングラデシュでは大学の講師)が、2020年度広島大学の博士課程に入学する計画である。この看護師を核に、疾病管理を行う看護師の養成拡大を図る計画である。
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