研究課題/領域番号 |
18H03114
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研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
三谷 篤史 札幌市立大学, デザイン学部, 准教授 (70388148)
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研究分担者 |
村松 真澄 札幌市立大学, 看護学部, 准教授 (50452991)
平井 慎一 立命館大学, 理工学部, 教授 (90212167)
松野 孝博 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (40815891)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シミュレーション教育 / 3Dプリンティング / センシング / 看護基礎技術教育 |
研究実績の概要 |
本研究では,看護学習者が臨床実習を行う前に,適切な食事介護の基礎的トレーニングを可能にするシミュレータを開発する.ここでは,口腔内,特に口唇や舌の神経を刺激しその機能を引き出す技術に着目し,舌や口唇モデルの内部にセンサを組み込み,食事介護におけるスプーンの動かし方を検出し評価する仕組みと,適切なスプーンの動かし方によって誘発される口唇閉鎖や咀嚼運動を行う仕組みを検討し,シミュレーションモデルを試作する. 平成30年度は,食事介護シミュレータの実現に向けた基礎的検討および舌モデルの開発に取り組んだ.はじめに,口唇閉鎖や咀嚼運動を誘発する専用スプーンの開発であるナーシングホーム気の里施設長・田中靖代氏の助言の元,舌モデルに適用するセンシングシステムを検討した.ここでは,検知するスプーンの動きに基づきセンサを選定するとともに,スプーンのサイズを元にセンサの配置を検討し,センサ基板を開発した.次に,センサ基板の形状寸法およセンサ配置を元に,舌モデルの開発を行った.舌モデルのサイズは,日本の成人の平均的なサイズを元にデザインを行った,また底部には,スプーンが舌モデル上を動く場合において,搭載したセンサがスプーン検出時に問題なく動作するように,センサ感度に基づく凹凸を設けることとした.なお,舌モデルの制作においては,ウレタンジェルの注型により造形する方法を適用することとし,3DCADにてデザインした注型用型を3Dプリンタで出力した. 得られた舌モデルの特性を検証するために,分銅を搭載したスプーンを舌状で滑らせた場合のセンサ信号を記録する基礎的実験を行い.舌にかかっている力およびその力がかかっている位置を検出できることが確認できた. 開発した舌モデルは,義歯モデルおよびマネキンにより構成される試作モデルに搭載し,専門職および学習者に対するヒアリニングを行い,その特性を検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時において,平成30年度に計画していた4項目それぞれについて自己評価を行う.まず「(1)口腔機能の改善が可能な食事介護の技術調査」については,ナーシングホーム気の里・田中靖代氏に助言をいただくとともに,実際の食事介護の様子をビデオに撮影させていただき,食事介護におけるスプーンの動きやスプーンを乗せる場所についての技術調査を行うことができた.「(2)食事介護に必要なセンシングシステムの検討」および「(3)スプーンの検出が可能な舌・口唇モデル検討」については,(1)の成果をもとに,適切なセンサの選定および配置,またセンサが十分に機能できる舌モデルが開発できた.また,「(4)舌・口唇モデルの基礎的実験」については,分銅を乗せたスプーンを用いた基礎実験により,基礎特性が確認できた. 計画になかった項目としては,舌モデル用センサからの信号を取り込み視覚化するソフトフェアのプロトタイプを開発した.これは,看護基礎技術教育に適用するときの手技評価ソフトウェアにも応用可能なものである.また,開発した舌モデルと,義歯モデルおよびマネキンにより構成される試作モデルを用いて,専門職および学習者に対する被験者実験にも着手できた. その一方で,項目(3)および(4)に記述の口唇モデルについては開発段階であり,搭載するためのセンサシステムについても検討中である.しかしながら,検討用モデルはすでに開発している状況にあり,組み込むセンサシステムについても,舌モデルに用いたセンサシステムを改良して適用する方法を検討しており,全体的な研究の進捗に影響をおよぼすものではないと考えている.以上の理由から,本研究は概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
(1)センサ組み込みが可能な口唇モデルの開発およびそのセンシングシステムを開発する.食事介護においては,口腔からスプーンを引き抜く際に,口唇への刺激を加えることが重要となる.そこで,スプーンによる圧力を検出可能な口唇モデルを開発する.ここでは,口唇閉鎖状態からスプーンを引き抜くときの口唇への圧力変化を検出可能なセンサシステムを組み込んだ口唇モデルを実現する. (2)舌モデルおよび口唇モデルを組み込んだ口腔モデルの開発と基礎実験をおこなう.これまでに開発した舌モデルおよび(1)で開発した口唇モデルを口腔モデルに組み込み,口腔ケア従事者,看護教育者および看護学習者に対して被験者実験を行う.ここでは,シミュレーションモデルに対して食事介護の手技を行ってもらい,センサの妥当性を検証するとともに,実際の人間との違いなどについてのヒアリングを行い,モデル改良の示唆を得る. (3)シミュレーションモデルの外観についての検討および評価を行う.本シミュレータを実際の基礎技術教育に展開する場合には,モデル外観は実際の人間に近い方が望ましい.教育用モデルとして,スプーンで刺激すべき神経や部位が明確化されたモデルも必要となる.そこで,患者の上半身を有するシミュレーションモデルの開発を行う.ここでは,既存の医療・看護用シミュレータを調査し,患者シミュレータの外観特性に必要な要素を抽出する.次に,食事介護シミュレータを組み込むことを前提として上半身モデルのデザインを行う.得られた上半身モデルを用いて評価実験を行い,モデル改良の示唆を得る. (4)手技評価ソフトウェアの開発および食事介護シミュレータを用いた被験者実験を行う.シミュレータを看護基礎技術教育に導入するための手技評価ソフトウェアを開発するとともに,それらを用いて看護学習者に対する被験者実験を行い,その有効性を検証する.
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