研究課題/領域番号 |
18H03124
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
柴崎 貢志 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (20399554)
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研究分担者 |
岡部 弘基 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (20455398)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | TRPV2 / 温度 / 神経 / 再生 / リハビリ |
研究実績の概要 |
TRPV2が熱センサー・メカノセンサーとしてのデュアル機能を持つことに着目して、TRPV2を効果的に活性化する手法を見いだす。特に、熱によるTRPV2メカノセンサー感受性の増大を切り口に研究展開をすることで、TRPV2CKOマウスを用いて、世界中で申請者だけが可能な検証実験系を構築し、新たな温熱リハビリ器具やリハビリ効果を促進する薬剤の開発を視野に入れた応用研究も行う。最終的に全ての知見を統合して、より効果的なリハビリ手法の開発を行うことを目的とする。 本年度は、細胞レベルでのTRPV2活性化機構の解析を行った。研究実施者は既に39℃以上の熱によってTRPV2メカノセンサー感受性の増大が起ることを見いだしていた。また、昨年度再生中の軸索内部に他領域よりも2℃高いホットスポット(=39℃)が局在することを見いだした。そこで本年度は、この39℃というホットスポット温度がTRPV2を活性化し、軸索再生を促すのかを個体レベルで検証した。研究実施者が作製した感覚/運動神経特異的なTRPV2欠損マウス(TRPV2CKOマウス)を用いた。妊娠したWTとTRPV2CKOマウスの腹腔内にカニュレーション手術を施し、そのカニューレから温水を循環させることで37℃(生理学的温度)と39℃(ホットスポット温度)で生体内の胎仔を発育させた。そして、翌日、胎仔を取り出して、前足をホールマウント染色し、その軸索長を定量比較した。その結果、生理的温度である37℃発育時にはWT群とTRPV2CKO群の間に軸索長の有意な差は生じなかった。一方、発育温度を39℃にし、軸索全体をホットスポット環境以上の高温暴露した場合には、WTと比較し、TRPV2CKO群では軸索長が有意に短くなった。つまり、再生中の軸索内部ホットスポット(39℃)がTRPV2を活性化し、軸索再生に有用な生体シグナルとなっていることを検証出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実施者が作製したTRPV2CKOマウスを用いて、個体の神経軸索伸長に及ぼす影響を解析する系を新たに開発することに成功した。また、細胞内の温度分布を解析する系も確立し、これを有効に活用することで、当初の計画以上に研究が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施者が開発している臓器局所温度可変装置(柴崎ら、特許公開 特開2012-055675、下図)を応用した温熱器具を作製する。そして、座骨神経切断マウス(WTあるいはTRPV2CKO)を毎日4時間、強制運動装置のみ、あるいは強制運動装置+温熱器具に取り付け、損傷足に強制的に運動を施す。WTの温熱群では軸索再生能が著しく向上しているのかを調べ、細胞レベルの知見(平成30年度)が個体におけるリハビリ効果に及ぼす影響を検証する。 次に、TRPV2アゴニスト投与によるリハビリ効果促進作用についても検証を行う。座骨神経切断マウス(WTあるいはTRPV2CKO)に対して、TRPV2アゴニスト・プロベネシドを胃内投与した後、毎日4時間、強制運動装置に取り付け、損傷足に強制的に運動を施す。WTのTRPV2アゴニスト投与群でのみ軸索再生能が著しく向上するのかを調べる。
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