研究課題
これまで電気治療をはじめとする物理療法は、教科書に記載されているような組織深度を基準に、経験的にその刺激条件の検証が行われてきた。治癒を促す組織の再生の程度や時期によって、その条件は変化するものであるが、そのような視点ではこれまで検証されてこなかった。すなわち今回のテーマである末梢神経障害の病態に沿って検証された結果ではないことから良好とは言えない臨床結果を示している。本研究は広帯域誘電分光法を用いて末梢神経再生時期に応じた細胞・組織特異的物理刺激条件の検索を行い、定位的時期特異的電気刺激法を開発する事を目的とした。本申請においては細胞や組織を、水分子を含んだタンパク集合体と捉え、そのタンパク集合体の時期、組成に応じた刺激条件を検証するといった手法であり、病理的なロジックモデルに即した再生促進条件を検証するものである。本研究は3年間の研究期間で、研究代表者:青山朋樹(京都大学大学院 医学研究科人間健康科学系専攻)、分担研究者:新屋敷直木(東海大学 理学部物理学 科)、分担研究者:池口良輔(京都大学医学部附属病院 リハビリテーション科)の研究体制で行う。本研究は3年間の研究期間に3段階で実施し、神経再生を促進 する物理刺激条件を明らかにする。・健常なミエリン、軸索、シナプスのそれぞれの組織が励起される電気刺激条件をスクリーニングする。・神経再生モデルで再生課程にある各時期においてスクリーニングで絞られた電気刺激条件を用いて、それぞれの組織が励起される刺激強度の確認を行う。・神経損傷治療モデルにおいて比較対照実験を行い、上記の電気刺激条件の有効性を検討する。
2: おおむね順調に進展している
分担研究者である新屋敷の開発したマイクロ広帯域誘電分光法解析装置を京都大学に設置し、ラットより摘出した末梢神経及び世界ではじめてIn vivoスクリーニングテストを行うシステムを構築した。この結果、XX Hzの刺激の際に特異的に神経内のタンパクの微振動が認められ、神経再生を促す際の電気刺激強度候補と考えられる。2018年度に開発した神経損傷モデルを用いて、今後はIn vivoスクリーニングテストを行い、至適電気刺激強度を決定していく。
2020年度は神経損傷モデルの治癒過程において、In vivoスクリーニング結果より得られた至適神経刺激強度を検証し、最も神経再生を促進するのに至適な刺激条件で、神経損傷再生モデルを用いて対照群を設定し、比較対照試験を行う。試験をおこなうN数は、群数や予備実験の結果から算定し実施する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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