研究課題/領域番号 |
18H03131
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
河上 敬介 大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (60195047)
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研究分担者 |
曽我部 正博 名古屋大学, 医学系研究科, 研究員 (10093428)
紀 瑞成 大分大学, 福祉健康科学部, 講師 (60305034)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 理学療法 / 筋萎縮 / マウス / リンパ管 / 筋力トレーニング |
研究実績の概要 |
これまでの我々の研究で,健常者へのトレーニングのエビデンスは筋萎縮に対して通用しないことを示唆する結果を得ている。そこで本研究の目的は,萎縮した筋に与える負荷の強度・頻度・インターバル等の方法を検証し,筋萎縮の回復促進のための効果的な負荷運動刺激法やそのメカニズムを明らかにすることである。一方,リンパ管は細胞間の間質液を維持・調節し代謝産物のバランスに重要な役割を持つと考えられ,筋の萎縮や肥大にも大きく関与すると考えられる。しかし筋病態やその理学療法応答の情報は皆無である。そこで,本研究では,萎縮筋における筋中のリンパ管の分布変化を明らかにするとともに,負荷運動刺激法による変化やそのメカニズムに迫ることも目的とする。そこで一昨年度作成したマウス骨格筋用力学刺激・評価装置を用いて,マウスの萎縮2週間経過後の筋に対して,等尺性の繰り返し収縮運動刺激を,最大筋力の40%で実施しその有効性が確認できた。これまで培養細胞での実験で判明した負荷運動刺激終了後に起こる蛋白質合成・分解の分子機構に関して個体レベルでも同様の現象を確認した。ただ,萎縮4週間経過後の筋に同様の負荷運動を実施しても,萎縮からの回復促進は認められないことが示唆された。一方,リンパ管をLYVE-1の免疫染色により,また毛細血管をCD31の免疫染色により同定し,筋萎縮と筋内リンパ管,筋萎縮と毛細血管の分布の関係を検証した。その結果,筋萎縮に伴いリンパ管,毛細血管ともに減少するが,毛細血管が筋萎縮2週間経過後に有意に減少するのに対して,リンパ管は4週間経過後に有意に減少にすることが判明した。この,リンパ管の減少には,リンパ管新生に関わるVEGF-C,VEGF-Dが関与していると考えWestern blottingで検証したが,有意な関連性は無かった。ただ,Real-time PCRでは,遺伝子発現の減少を示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋萎縮モデル作製を開始してから2週間経過後の筋に対して,等尺性の繰り返し収縮運動刺激を,最大筋力の40%で実施し,その有効性や、メカニズムの一端を明らかにすることができた。これに加えて,筋萎縮モデル作製を開始してから2週間経過後の萎縮筋と4週間経過後の萎縮筋では負荷運動に対する筋の形態応答が異なることを明らかにした。一方,これまで誰も明らかにしていない,筋萎縮に対するリンパ管分布応答について初めての所見を得ることができ,すなわち,リンパ管と毛細血管とでは減少する時期が異なり,リンパ管の減少は毛細血管の減少よりも遅れて起こることを明らかにすることができた。また,そのメカニズムの手がかりも得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き,筋萎縮4週間経過後に起こる,リンパ管の減少のメカ二ズムを明らかにするため,Real-time PCRを用いて, VEGF-C,VEGF-Dの変化を明らかにする。昨年度から実施している,筋萎縮4週間経過後の筋に対する回復促進効果を持つ負荷運動の期間や強度を検証する。検証は,昨年度に引き続き,組織学的(筋線維横断面積の測定),生理学的(足関節トルクの測定),生化学的(蛋白質の合成や分解のシグナル分子やmRNAの測定)に実施する。さらに,その際の,リンパ管や毛細血管の分布の変化を免疫組織化学的に検証するとともに,その変化のメカニズムを生化学的に検証する。以上の検証の中で,筋萎縮や筋萎縮に対する運動負荷による萎縮からの回復と脈管系の関与を現象的にとらえる。
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