研究課題
本研究では、脳卒中片麻痺患者における小脳と基底核による2つの学習機構(感覚予測誤差学習と強化学習)に着目し、学習機構のそれぞれのモダリティ低下と脳損傷部位との関連を、行動実験、臨床的指標、電気生理学・画像解析によりシステム論的に理解することを目的とした。また、実際の脳卒中片麻痺患者の学習機能低下と帰結との関連性について、多症例の縦断データにおいて検討し、学習機構の変容が機能回復へ及ぼす影響の解明を試みた。研究では、まず外骨格ロボットKINARMをプラットフォームとして、脳卒中片麻痺患者において2つの学習能力を見分けることが可能な上肢運動課題プログラムを確立し実装した。その上で、多症例の回復期脳卒中片麻痺患者において確立した運動課題プログラムを実施し、実際の測定データから、学習機構をモデル化し学習率と忘却率などから学習能力をパラメータ化することに成功した。それらの学習パラメータとさまざまな臨床指標、脳内の神経ネットワークの状態を評価する電気生理学的評価(第一次運動野の興奮性、皮質脊髄路の健全性、皮質内抑制、小脳抑制および末梢の評価として運動神経を刺激して得られる複合筋活動電位)、画像評価等との関連を検討した。結果、運動課題の成績から導出される学習能力の良し悪しを反映する幾つかのパラメータのうち、臨床指標と関連するものがあることが示唆された。本研究により、学習機構の能力のパラメータ化とそれに関連する臨床的指標と関係についての研究のフレームワークが初めて確立された。今後さらに大規模症例による検討を行うことにより、学習機構と病態、機能的帰結についての総合的理解ができるものと考えられる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
PlosOne
巻: 16 ページ: -
10.1371/journal.pone.0247998
Frontier in Neurology
巻: 11 ページ: -
10.3389/fneur.2020.577855
Physical Therapy
巻: 100 ページ: 870-879
10.1093/ptj/pzaa025
Clinical Neuroscience
巻: 38 ページ: 732-735