研究課題/領域番号 |
18H03137
|
研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
飯山 準一 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (00398299)
|
研究分担者 |
岩下 佳弘 熊本保健科学大学, 保健科学部, 講師 (70623510)
桑原 孝成 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (00393356)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 慢性腎臓病 / 疫学研究 / 温熱習慣 / 温熱感受性遺伝子群 / ROCK1発現減少 / MYLK発現減少 |
研究実績の概要 |
当初計画に従い、効率よく健診データを収集できる研究フィールドを確保するために、健診事業者、企業の健康管理部門、腎疾患の患者団体、自治体と交渉を行った。いずれも協力は得られず、疫学研究におけるデータ収集の壁に直面した。 基礎メカニズムの解明に向けては、我々が用いる温熱刺激でタンパク合成に変動の見られる温熱感受性遺伝子群を特定する目的で、C3H/Heマウス(雄, 9週齢)の腎組織を用い、温熱刺激から6時間後の52,145遺伝子の発現をmicro arrayを用いて網羅的に解析した。 その結果378の遺伝子で有意な増加を、470の遺伝子で有意な減少を示した。これらの遺伝子をDAVID v6.8 アノテーションツールにインポートし、Gene ontology(GO) 生物学的機能解析およびKEGG pathwayを活用した経路分析を行ったところ、ROCK1発現の有意な減少、MYLK発現の有意な減少を認めた。 MYLKにコードされるミオシン軽鎖キナーゼは、ミオシン軽鎖をリン酸化させて血管平滑筋を収縮させる。また、ROCK1にコードされるRhoキナーゼはミオシン軽鎖フォスファターゼを抑制してリン酸化MLCの脱リン酸化を減少させることから、温熱刺激後に認められたMLCK、ROCK1の減少は、Rhoシグナル経路介して血管平滑筋を弛緩させて、腎血流を増加させることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
疫学研究のフィールドに関して、当初協力を得る予定であった健診事業者側の事情(システムリプレースでマンパワーが割けないとの理由)で、予定していた計画が頓挫してしまった。その後フィールドとして企業、自治体、病院、患者団体等、データ収集の研究協力を得るための交渉を行ったが、個人情報保護法によるハードルが高く、最終的に協力が得られるまでには至らなかった。 一方で温熱の基礎メカニズム解明に向けては、着実にデータも出ており、順調な進捗を見せていることから、最終的に“(3)やや遅れている”と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
疫学研究については、データ収集のベースとなるフィールド確保が急務である。データ管理側からの効率の良いアプローチが困難であれば思考を転換し、一般市民から個々人のデータを収集する方法の実現可能性を探る。ウェブアンケートシステムと顧客管理システムを用いて、独自のデータ収集プラットフォームを立ち上げれば打開策となる可能性がある。 基礎研究については、我々がフォーカスを当てる深部体温を約1℃上昇させる温熱刺激が細胞内にシグナル伝達される入り口となるTRPチャネルを絞り込み、自律神経系を介した反応以外の経路を明らかにする。
|