研究課題/領域番号 |
18H03141
|
研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
田添 歳樹 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主席研究員 (60513017)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 脊髄損傷 / 磁気刺激 |
研究実績の概要 |
本研究は、非侵襲型人工神経接続による脊髄損傷者の歩行機能が、いかなる条件のもと、どのような生理学的機序でもたらされるかを多角的に調査し、明らかにすることを目的としている。研究の3年目にあたる2020年度は、非侵襲型人工神経接続により効果的に介入を行うための方法を引き続き検証するとともに、特定臨床研究として長期間の介入試験を開始した。 <研究課題1:人工神経接続により運動機能回復が見込める脊髄の損傷状態の特定>異なる髄節レベルに損傷を負った延べ10名の脊髄損傷者を対象に非侵襲的脊髄磁気刺激を行い、随意運動麻痺のある下肢筋から誘発筋電図を導出できる脊髄損傷者と誘発筋電図を誘発できない脊髄損傷者を識別することができた。また、脊椎に埋め込み金属がない脊髄損傷者でMR画像を取得し、脊髄損傷の範囲を検証することができた。これらのMR画像をもとに、脊髄をVR上で可視化して脊髄磁気刺激が行える脊髄刺激ナビゲーションシステムの開発が進んだ。 <研究課題2:人工神経により制御される脊髄神経回路の刺激方法の探索>経脊椎磁気刺激を用いた人工神経接続を介して、脊髄損傷者が自身の意思で脊髄運動神経の活動を駆動し歩行様運動を行うことができた。また、第11胸椎から第5腰椎にわたる領域で脊髄歩行運動マップを作成し、歩行様運動が効果的に誘導可能な刺激位置を特定することができた。 <研究課題3:身体運動機能の回復を担う生理学的機序の解明>
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の3年目において、本研究は順調に進展した。非侵襲型人工神経接続の介入開始前の脊髄神経の残存機能を評価する電気生理学的手法、MRIによる神経撮像法を確立する中で、脊髄損傷者の損傷位置の特定やMR画像と磁気刺激装置を組み合わせた脊髄刺激ナビゲーションの開発を進めることができた。本年度は、5名の脊髄損傷者において非侵襲型人工神経接続を用いた長期間の臨床試験も開始することができ、人工神経接続の長期介入効果とその生理学的データを継続的に取得できている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度にあたる2021年度は、研究課題3(身体運動機能の回復を担う生理学的機序の解明)を検証するために、非侵襲型人工神経接続による長期間介入の臨床試験を継続して実施する。それにより、下肢麻痺を呈する脊髄損傷者が非侵襲型人工神経接続を利用することによって得られる歩行機能改善の生理学的背景を明らかにしていく。人工神経接続による介入は6ヶ月間行い、その前後に下肢運動機能を測定するとともに、経頭蓋磁気刺激や経脊椎磁気刺激によって大脳皮質、脊髄運動神経レベルでの運動神経回路の活動を評価する。
|