本研究は、非侵襲型人工神経接続による脊髄損傷者の歩行機能が、いかなる条件のもと、どのような生理学的機序でもたらされるかを多角的に調査し、明らかにすることを目的としている。研究の最終年度では、前年度に引き続き、特定臨床研究として長期間の介入試験を継続して実施した。 <研究課題3:身体運動機能の回復を担う生理学的機序の解明> 慢性期脊髄損傷者を対象に特定臨床研究として6ヶ月間の非侵襲型人工神経接続による介入を行った。脊髄磁気刺激により誘導される歩行運動は、重症度に関わらず頸髄損傷・胸髄損傷の対象者において、介入経過に伴って増大することが認められた。一方で、腰髄損傷の対象者については増大しない者がいた。脊髄磁気刺激のない状態での本来の歩行運動は、損傷位置に関わらず重症度が低い対象者ほど顕著な回復を示した。また、この回復には経頭蓋的磁気刺激による下肢筋群の運動誘発電位の増大と関連があった。これらの結果から、非侵襲型人工神経接続は、歩行運動に関連した脊髄内神経回路と脳と腰髄を結ぶ下降性運動神経経路の活動性を可塑的に増大させることが示された。
|