パフォーマンスの揺らぎを最小限に抑えるために重要な要因のひとつに、突風など不可避的・非予測的な外乱に対してその後のパフォーマンスを乱さないことが挙げられる。このような外的要因によるエラーはどのように以降のパフォーマンスに影響をもたらすだろうか?先行研究では、実際のエラーとは異なるエラーを視覚的に提示しつづける課題(視覚的エラークランプ課題)を用い、実験参加者がそれを自分自身のエラーではないと理解していても、無意識のうちにそのエラーに基づいて自身のパフォーマンスを修正してしまうことを報告してきた。しかし、これらのエラー修正の度合が実験参加者の通常時の動作のばらつきとどうように関係するのかについては、一致した見解が得られていなかった。 そこで、本研究では、この関係がエラークランプ課題で提示されるエラーの大きさに依存するという仮説のもと、到達運動課題を用いて実験を行った。実験では、エラークランプ課題時に提示するエラーサイズを複数設定し、各サイズにおけるエラークランプ課題後の修正の大きさと通常時の動作のばらつきの関係を調べた。 結果として、エラークランプ課題時の提示エラーが小さいときはその修正度合と動作のばらつきに相関がみられなかったが、エラーが大きいときには有意な正の相関が示された。このことは、外的要因によるエラーに対する修正の度合はそのエラーサイズと通常時の動作のばらつきの度合に依存することを示しており、通常時のばらつきが小さいほど大きな外因的エラーに惑わされないことが示唆された。
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