研究課題/領域番号 |
18H03145
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
菊 幸一 筑波大学, 体育系, 教授 (50195195)
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研究分担者 |
Leitner Katrin 立教大学, コミュニティ福祉学部, 准教授 (10744906)
笠野 英弘 山梨学院大学, スポーツ科学部, 准教授 (20636518)
清水 紀宏 筑波大学, 体育系, 教授 (50196531)
海老島 均 成城大学, 経済学部, 教授 (60203650)
水上 博司 日本大学, 文理学部, 教授 (90242924)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 公共性 / 歴史社会学 / 民間スポーツ組織 / 統括性 / 日欧比較 / 法人組織 |
研究実績の概要 |
4年計画における2年次では、昨年度(1年次)の研究結果から得られた分析枠組みに基づく半構造化面接法により、主に英独のスポーツ統括組織の関係者及びスポーツ組織研究者に対して、両国の「統括性」に対する考え方とそれを支える公共性概念との関係についてインタビュー調査を行った。 英国調査では、ロンドンオリンピック後のYouth Sport Trustと英国陸上競技連盟の幹部に対して組織的公共性とその統括性との関係について、またラフバラ大学のドミニク・マルコム教授、ロンドン大学のリチャード・ターソン教授に対して英国スポーツ組織の「統括性」に関する予備的インタビュー調査を行った。その結果、主に青少年期スポーツの実施格差を解消しようとするYouth Sport Trust が有する組織的なチャリティー性の重要性と、それ以外の競技組織に対するガバナンス・コードのトップダウン的な性格が明らかになった。 ドイツ調査では、昨年調査したDOSB等の中央統括組織に対して主に州レベルのスポーツ組織や種目別組織の関係者にインタビュー調査を行った。その結果、フェラインに近い下部組織関係者ほどトップダウンの統括性に戸惑っており、従来のゲマインシャフト的なボランティア性が発揮しにくくなっている状況が明らかになった。このことは、ケルンスポーツ体育大学のクリストファー・ブロイアー教授のインタビュー調査からも確認された。 フランス調査では、HP等による資料収集を行うとともに、フランス柔道連盟元副会長であるミッシェル・ブルース氏とコンタクトを取り、来年度調査に向けた交渉窓口を依頼することができた。 日本調査については、主に日本スポーツ協会を通じて、都道府県別体育・スポーツ協会、レクリエーション団体、及び商業スポーツ組織に対して質問紙調査を行った段階に止まっているが、来年度にその結果と考察が実施できる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初2年次計画で予定していたのは、英仏独のスポーツ統括組織の関係者及びスポーツ組織研究者に対して、各国の「統括性」に対する考え方とそれを支える公共性概念との関係について予備的なインタビュー調査を行うことであった。先の研究実績の概要にも記したように、英独についてはインタビュー調査の成果を概ね示すことができた。特に、ドイツ調査は、1年次に中央競技団体に対する予備調査を終えていたので、今回の州(地方自治体)レベルのスポーツ組織のインタビュー成果はその比較検討という意味で1つの区切りが付けられる研究の進捗がみられた。それに対して、英国調査では当初、予定していた UK Sport や Sport England、あるいはSport & Recreation Alliance の調査を実施することができず、今年度は英国研究者と2つの関連組織関係者へのインタビュー調査に止まる結果となった。次年度には、当初の計画であった中央統括組織への調査を行う予定である。 また、フランス調査については予備的調査を行う予定であったが、HP等による情報収集と来日していたフランス柔道連盟関係者への予備的なインタビューに止まる結果となった。しかし、来年度に向けての調査準備は進んでいると評価できる。 日本の調査については、当初予定していた具体的な調査結果を得るまでには至っていないが、その理由は東京オリ・パラの開催準備で各調査対象者やスポーツ関連団体が多忙を極め、調査の進行が遅れがちになっていることにある。結果的には東京オリ・パラの1年延期と新型コロナ禍による海外調査への影響により、その実施可能性について予断の許されない状況ではあるが、来年度調査に向けた今年度の準備は概ね順調に進んでいると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度(2020年度)は4年計画における3年次にあたり、昨年度(2年次)に実施した研究結果から得られた主に英独のスポーツ統括組織の関係者及びスポーツ組織研究者のインタビュー内容に対して、「公共性」をめぐる歴史的社会学的な観点からその「統括性」のメカニズムに焦点化して考察する(イギリスについては海老島担当。ドイツについてはカトリン、笠野担当。なお、両者にまたがる比較検討は菊担当)。また、これらの結果を日本のそれとの関係から比較考察し、その特徴について予備的な検討を行う(清水、水上、笠野担当)。 海外調査については、フランス柔道連盟とその紹介競技団体、及びフランススポーツ統括組織(INSEP)の関係者に対してインタビュー調査を行う(笠野、カトリン担当。統括は菊担当)。特に、2024年に予定されているパリオリンピックに向けた民間スポーツ組織の動向と政府や経済組織との関係における組織的「統括性」の変化について調査する。 日本調査については、昨年度予定していた日本スポーツ協会(JSPO)や日本オリンピック委員会(JOC)の協力を得ることによる、中央競技団体及び地域スポーツ組織に加え民間営利スポーツ組織の統括性を中心とする質問紙調査の回収率が悪かったため、継続して質問紙調査を実施する(清水、水上、笠野担当)。 このように3年次の計画では、フランス本調査を新たに実施するとともに、2年次の本調査で不十分であったイギリス及び日本の調査を補完的に行う。その際、世界的な新型コロナウィルス感染によって「2020東京」が1年延期された結果、特に我が国の民間スポーツ組織の統括性がどのように機能したのかについても、新たな課題として検討する予定である。 以上の作業を行うため、代表者のもとに1名の非常勤研究員を引き続き雇用し、上記調査及び資料収集の整理等が迅速に進行するよう補助の任に当たらせる計画である。
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