研究課題/領域番号 |
18H03146
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
天野 達郎 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (60734522)
|
研究分担者 |
藤井 直人 筑波大学, 体育系, 助教 (00796451)
井上 芳光 大阪国際大学, 人間科学部, 教授 (70144566)
近藤 徳彦 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70215458)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 体温調節 / 熱中症 / アドレナリン / アポクリン汗腺 / エクリン汗腺 / 運動トレーニング / 暑熱順化 / ノルアドレナリン |
研究実績の概要 |
本年度は暑熱ストレス下において汗腺のαアドレナリン受容体,βアドレナリン受容体を刺激した時に発汗増幅反応が生じるかどうかを若年者48名を対象に検討した.実験1では環境温度がそれぞれの反応に及ぼす影響を,実験2では性差の影響を,実験3ではトレーニングの影響を検討した.その結果,暑熱下においてわずかに発汗がみられる状態で両アドレナリン受容体を刺激すると,各反応とも増幅し,その程度はβ刺激時により顕著になることが明らかになった.事前にムスカリン受容体を阻害した状態で同様の試行を行うと,αアドレナリン性発汗はその影響を受けなかったものの,βアドレナリン性発汗の増幅は完全に消失した.このことから,暑熱下におけるβアドレナリン性発汗の増幅はムスカリン受容体に関連した機構によって生じることが考えられる.αアドレナリン性発汗の増幅はQ10効果など,温度依存性のものと推察される.実験2では,この増幅反応の性差を検討し,両アドレナリン性発汗とも男性>女性となることを明らかにした.また実験3では,運動トレーニング者はαアドレナリン性発汗が非トレーニング者よりも大きくなるものの,β発汗は両群で同程度であった.これらの研究成果は,アドレナリン性発汗には増幅に関するメカニズムが存在することと,その反応は性差やトレーニングに影響されることを示している.一方,このような増幅がどのような機構によって生じるのか,あるいはムスカリン受容体の活動レベルによってどう異なるのかなど,今後検討すべき新たな課題も明らかになった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
若干のプロトコル変更があったものの,当初目的は十分達成できた.また,+αで関連するメカニズムの検討も行うことができたため,当初の計画以上に進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,βアドレナリン性発汗を促進する食品摂取で発汗亢進が認められるかを検討する予定である.特にカフェインはホスホジエステラーゼ阻害効果によってβ作用を促進することが知られている.そのため,運動前にカフェインを摂取することで運動時の発汗が亢進するかどうかを検討する. また,同時にトレーニングによって発汗が増加するメカニズムとして,ムスカリン受容体を刺激した時のカルシウムやカリウムイオンチャンネルがどのように関わっているかを検討する.さらに今回認められたβ発汗とムスカリン受容体の相互作用についてより詳細に検討する実験も行う予定である.
|