研究課題/領域番号 |
18H03147
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
能勢 博 信州大学, 医学部, 特任教授 (40128715)
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研究分担者 |
森川 真悠子 信州大学, 先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所, 助教(特定雇用) (10596068)
樋口 京一 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20173156)
増木 静江 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (70422699)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 老化 / 筋萎縮 / カウンターメジャー / インターバル速歩 / エピジェネティック効果 |
研究実績の概要 |
我々は過去15年以上にわたって中高年者の運動教室「熟年体育大学」事業を運営し、7,500名の中高年者を対象に、5ヶ月間のインターバル速歩トレーニング(IWT)の効果を検証した。その結果、体力が最大20%向上し、それに比例して生活習慣病の症状が20%改善し、医療費が20%抑制されることを明らかにした。しかし、より長期間のIWTの効果は不明であった。そこで、IWTの10年継続者を対象に、すでに記録した身体特性、体力、血液成分に加え、新しく炎症関連遺伝子、長寿遺伝子活性を測定することにした。そして、それらを同年代の対照群と比較し、IWTの長期間継続の「若さ維持」効果を遺伝子から個体レベルで解析することを、本研究の目的とした。 2018年度には、インターバル速歩10年継続群と対照群について、炎症関連遺伝子活性を測定するための血液採取を行った。本来、それにひきづづき遺伝子活性を測定する予定であったが、別途、同被験者群を対象に下部尿路症状をついてのアンケート調査を行った結果、加齢による最高酸素摂取量の低下と下部尿路症状が比例することが明らかとなった。そこで、予定していた遺伝子活性測定を一旦中断し、対象被験者の下部尿路「機能」測定を行うことにした。その結果、最高酸素摂取量の低下と膀胱血流量と排尿速度などの機能低下が比例することを確認した。 2019年度は、これらの下部尿路症状・機能を測定した被験者について優先的に炎症関連遺伝子活性を測定する予定である。10年継続群では同年代の対照群に比べ、最高酸素摂取量が高く維持され、それに比例して、下部尿路機能が維持され、生活習慣病の症状が軽いこと、さらに炎症促進(抑制)遺伝子活性が抑制(促進)されることが期待できる。 若干の計画の遅れはあるが、ほぼ予定の研究期間内に研究は終了する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、2018年10月頃からすでに採取した対照群、10年継続者の炎症関連遺伝子群のメチル化を測定し解析する予定で人件費を申請したが、別途、高齢者約500名に対して下部尿路症状に関するアンケート調査を実施したところ、同遺伝子群が、すでに採取済みの最高酸素摂取量、血圧、血液成分などの生活習慣病症状のみならず、排尿障害などの下部尿路症状にも強く関与している可能性を示唆する結果を得た。そこで、2018年度の後半は遺伝子のメチル化測定用に準備していた研究員の雇用を一時延期し、超音波診断装置とそのプローブを購入し、アンケート調査に答えてくれた方々を対象に、膀胱血流、排尿速度などの下部尿路機能を測定することにした。次年度、これら下部尿路症状のアンケートに答え下部尿路機能を測定した被験者の遺伝子群のメチル化を優先的に測定する。遺伝子情報と臨床症状の関連についてより価値の高い結果を得るために計画に若干の遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、下部尿路機能を測定した被験者を優先することを念頭に、従来の計画通り、炎症関連遺伝子活性の測定を行う。 1)対照群の遺伝子修飾の加齢変化:今年度に引き続き、対照群(非実施者)について、年齢別炎症促進遺伝子のメチル化を測定する。同事業は2005年588名で始まり、その後、毎年、平均100名足らずの新会員が入り、その都度、トレーニング実施前に遺伝子解析用血液試料を採取しているので10年間で合計2200名の「トレーニング前」の遺伝子データが蓄積されている。そこで、これらの会員を対象に60歳から80歳までを4歳ごとの5つのBinにわけ、それぞれが200人になるように無作為に抽出する。これらの被験者を対象に、白血球から炎症関連遺伝子のキー遺伝子であるNFκB1,2遺伝子について、メチル化測定をおこなう(共同研究者の森川真悠子・樋口京一が担当する)。 2) 10年継続群における10年目の遺伝子修飾と遺伝子発現:10年継続者について、10年目に血液採取を行い、炎症促進遺伝子(NFκB1,2について、メチル化測定をおこなうとともに、それら遺伝子のmRNA(PCR法)と発現蛋白質の微量定量化をおこなう(共同研究者の増木静江・松田和之が担当する)。期待される結果としては、10年継続群では、対照群の同年齢の被験者に比べ、体力が維持され下部尿路症状を含む生活習慣病の症状が良好で、炎症促進遺伝子の不活性化(メチル化)がおき、それらの遺伝子の蛋白発現に影響することである。さらに、1) で求めた体力と遺伝子修飾の加齢変化と比べることで、インターバル速歩による「若返り」効果を遺伝子レベルから個体レベルで明らかにする。
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