研究課題/領域番号 |
18H03151
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
木場 智史 鳥取大学, 医学部, 准教授 (40565743)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 交感神経 / 光遺伝学 / 運動 / 歩行 / 中脳 / 延髄 |
研究実績の概要 |
運動は動物において生命維持の根源機能であり(例:闘争か逃走か),運動時交感神経活性は運動を発現するのに必要不可欠な生体適応である.脳がどのように作動して運動時交感神経活性を引き起こすかは,19世紀末以来の解明課題であるにも関わらず,未解明である.「運動を発現するために高位中枢から生じるシグナル(セントラルコマンド)」は交感神経活性も引き起こすと考えられている(セントラルコマンド仮説).本計画では,研究代表者の独自知見を基盤とし,運動時の交感神経活性を担う中枢回路を解明する.そして物理的に実在する中枢回路を根拠とし,これまでに曖昧に記述されていたセントラルコマンドの実体の明文化を目指す.本計画では,ラットin vivo生体信号記録系に,光遺伝学やDREADDなどの遺伝子導入を用いる分子細胞生物学の先端技術を融合させる実験戦略から,この課題にアプローチする. 平成30年度には,「本計画において新規同定した中脳から延髄への投射神経には,交感神経活性能がある」こと,「この投射神経からの延髄におけるグルタミン酸放出が交感神経活性を起こすのに重要である」こと,そして「この投射神経は歩行誘発能ももつ」ことを突き止めた.これらの知見から,この投射神経はセントラルコマンド機能を生成することが可能であることを明らかにした.成果の一部は平成30年度に行われたいくつかの学術会議において学会発表という形で報告した.次年度以降の課題として,この投射神経がセントラルコマンド機能を生成するのに必要か否かを検証する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予備実験の結果を受け,当初計画していたDREADDを用いたin vivo実験を推進しないこととした.一方で,光遺伝学を用いたin vivo実験では当初の計画通りの進捗があった.そして光遺伝学実験で得られた成果を発展させるために,運動時の行動解析も組み合わせる実験を新たに計画し実行した.その結果,運動系と自律神経系とをリンクさせる神経細胞集団が存在することを新発見した.この成果は当初に企画した研究計画以上の学術的意義を有していると考えられ,その点において,本研究は当初の計画以上に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに,セントラルコマンドの機能を生成可能な中枢神経細胞集団を特定した.本年度にはこの神経細胞集団が実運動時においてセントラルコマンドの機能を生成するのに必要か否かを明らかにする.また,覚醒動物の中枢神経細胞集団の活動検出実験系の構築を進める.
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