|
運動時交感神経活性は運動を行うのに必要不可欠な生体適応である．脳がどのように作動して運動時交感神経活性を引き起こすかは，19世紀末以来の運動生理学における解明課題であるにも関わらず，今だ解明に至っていない．「運動を発現するために高位中枢から生じるシグナル(セントラルコマンド)」は交感神経活性も引き起こすと考えられている(セントラルコマンド仮説)．本計画では，研究代表者の独自知見を基盤とし，運動時の交感神経活性を担う中枢回路を解明する．そして物理的に実在する中枢回路を根拠とし，これまでに曖昧に記述されていたセントラルコマンドの実体の明文化を目指す．2020年度には，前年度までの成果を基盤として立てた仮説「中脳―延髄神経が運動時交感神経活性を担うのに必要である」を検証した．自由行動ラットでの生体信号記録・行動解析・光遺伝学を組み合わせた実験系から，上記の仮説を立証するに至った．前年度までの成果と合わせ，本計画開始時に予定した計画研究の全てを，計画最終年度である本年度内に完遂した．セントラルコマンドの中枢回路の全貌解明を目指す次年度以降の研究を見据え，本計画で調査した中脳―延髄神経を制御し得る上位脳領域を探索した．ラット脳に対する神経トレース実験から，ある脳領域に着目するに至った．そしてその領域の活動操作時の循環反応および行動の観察実験から，セントラルコマンド機能生成への関与が予想された．
|
