研究課題
我々の研究グループにおいて、運動習慣が脳認知症発症を予防(Tarumi et al. 2017)、また一過性の運動においても認知機能を高めることを報告した(Ogoh et al. 2014)。特に近年、運動は認知症発症予防の有効な手段として臨床研究分野において注目されており、重要な研究対象となっている。本申請研究では、この運動による認知機能改善のメカニズムに関するパラドックッスを明らかにすることを目的としている。平成30年度は、初年度であり、特に脳血流と認知機能との関連を明らかにするための実験を行ってきた。我々は、高強度インターバルエクササイズ(HIIE)は脳実行機能(EF)を改善することを報告したが(Tsukamoto et al. 2016)、この時の脳血流、脳乳酸摂取量、脳由来神経栄養因子(BDNF)の変化と認知機能改善との関連性を確かめるため実験を行った。我々は、高強度運動時脳血流が低下していることから(Ogoh et al. 2005)認知機能の改善は、脳乳酸摂取に関連すると仮説を立てた。脳乳酸摂取量を変化させる為、14名の健康な男性被験者は、60分の休憩を挟んで、2セットのHIIEを行った。血液サンプルを、右頸静脈および上腕動脈から得て、乳酸、グルコース、酸素、およびBDNF動静脈較差を算出した。また、実行機能(EF)は、カラーワードStroopタスクによって評価した。1回目のHIIEでは運動後40分間EFを改善したが、2回目HIIEでのEFの改善は運動直後のみであった。HIIE後のEFは特に脳の乳酸代謝の減少に関連した。これらの結果は、脳機能は、乳酸シャトルメカニズムの例として全身代謝に関連していることを示唆した。これらの結果は、FASEB J. (2018:1417-1427)で発表した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画書に関する研究①の実験がおおむね終了し、現時点で関連研究を幾つかの英雑誌には発表している。本研究に関する論文は、平成30年度では、生理学系英雑誌に12編、平成31年度は既に6編掲載されている。本年度も継続してこの課題に取り組んでいく。
前年度(平成30年度)に行った関連実験の論文をすべて英関連雑誌に掲載することを目指す。また、本年度の研究課題、調書の実験②を研究計画に基づいて行っていく。前年度は、特に様々な生理刺激に対して、重要な知見が得られたが、本年度は、特に脳循環調節機能と認知機能との連関について実験を行い、その生理メカニズム及び結果に関する生理的意義について明らかにしていく。昨年同様、横断的手法により実験を行うが、研究目的達成のために実験方法や測定方法は柔軟に対応していく。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (18件) (うち国際共著 11件、 査読あり 18件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
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