研究課題
健康長寿を目指して運動が推奨されている。特に、運動器である骨格筋の機能の維持向上が重要な課題である。しかし、加齢に伴う骨格筋量と機能の低下(サルコペニア)に対する適切な運動処方は確立しておらず、早急に解決が望まれている。サルコペニアは、日常生活活動に大きな変化がなくとも発症し、骨格筋機能と量は低下がすることが知られている。したがって、運動刺激に対する感受性が低下することが、加齢に伴う骨格筋機能や量の低下を引き起こすことを強く示唆する。一方、骨格筋は機械的刺激に応答して適応を示すものの、骨格筋が機械的刺激を受容する仕組みは未だに明らかにされていない。そこで本研究では、骨格筋細胞における機械的刺激受容チャネルとしてのピエゾチャネルに着目し、運動刺激に対する骨格筋の適応における機械的刺激受容機構を解明し、ピエゾチャネル活性化による運動効果獲得増強法およびサルコペニア予防と改善策を確立ための知的基盤を形成することを目的としている。本研究は4年計画で実施され、平成30年度はその初年度に当たる。平成30年度は、まず骨格筋細胞におけるピエゾチャネル発現プロファイル(筋タイプによる差を含めて)を追究した。その結果、Piezo1の発現量が最も高く、Tentonin 3発現量が最も低かった。さらに、速筋に比べて遅筋において高い発現量が確認された。C2C12および筋衛星細胞から分化させた筋管細胞に対して伸展刺激を負荷することで、細胞内Ca2+濃度の増加が確認された。
2: おおむね順調に進展している
ピエゾチャネルチャネル発現プロファイルの解析、培養骨格筋細胞を対象としたピエゾチャネルチャネル機能解析は、平成30年度の当初計画の通り順調に進んでいる。現在、siRNAならびにチャネル阻害剤および活性化剤を用いたピエゾチャネルの修飾実験を実施している。また、平成31年度に予定していた筋衛星細胞を用いた解析はすでに着手済みである。一方で、機械的刺激による遺伝子の網羅的発現解析が行われていないので、平成31年度の早い時期に実施する予定である。さらに、研究計画の3年目ならびに4年目に実施予定の骨格筋組織レベルでのピエゾチャネルチャネルの機能解析のためのマウスの準備は、平成31年度から予定していたが、一部前倒して平成30年度にすでに着手した。以上より、おおむね順調に進展していると考えている。
培養細胞を用いた機能解析を進め、骨格筋細胞における機械的刺激受容機構としてのピエゾチャネルチャネルの役割を解明する。さらに、免疫組織学的アプローチを加え、ピエゾチャネルの細胞内局在ならびにピエゾチャネル発現が骨格筋細胞の形態の発達および維持における役割を追究する。骨格筋組織レベルの機能解析を行うためのPiezo1コンディショナルノックアウトマウスと加齢マウスの作成を平成30年度に開始した。平成32年度には機能解析ができるように、準備を進める計画である。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 8件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
Acta Physiologica
巻: 223 ページ: e13042
10.1111/apha.13042
The Journal of Physical Fitness and Sports Medicine
巻: 7 ページ: 203
10.7600/jpfsm.7.203
巻: 7 ページ: 221~227
10.7600/jpfsm.7.221
巻: 7 ページ: 229~238
10.7600/jpfsm.7.229
International Journal of Molecular Sciences
巻: 19 ページ: 2954
10.3390/ijms19102954
PLOS ONE
巻: 13 ページ: e0205645
10.1371/journal.pone.0205645
Journal of Zhejiang University-SCIENCE B
巻: 19 ページ: 844~852
10.1631/jzus.B1800076
Frontiers in Genetics
巻: 9 ページ: 617
10.3389/fgene.2018.00617
http://www.sozo.ac.jp/professor/goto_katsumasa/publications.html