研究課題/領域番号 |
18H03162
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
藤本 雅大 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (10732919)
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研究分担者 |
伊坂 忠夫 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (30247811)
長野 明紀 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (30392054)
真田 樹義 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (50421227)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 姿勢制御 / 体重移動 / 動作分析 / 応答動作 |
研究実績の概要 |
本年度は,(1)下肢の荷重状態および(2)転倒経験の有無が側方へのステップ応答に及ぼす影響の検討を実施し,それぞれ以下の成果を挙げた. (1)膝の屈曲伸展運動により生じる下肢の加重と抜重状態が,側方へのステップ応答に及ぼす影響を検討した.視覚刺激に対する側方へのステップを要求する課題において,刺激提示前に膝の屈曲伸展動作(予備動作)を伴わない場合と,予備動作により下肢が加重あるいは抜重過程にある場合でのステップ応答を若年者において比較した.その結果,刺激提示前に予備動作を伴う場合に,伴わない場合と比較してステップ応答が短縮した.ステップ動作開始時に下肢が加重/抜重局面にある時には,支持脚の加重に要する時間/ステップ脚の抜重に要する時間がそれぞれ短縮しており,それらが素早いステップ応答の要因であることが示唆された.膝の屈曲伸展動作はその後の側方への素早いステップを可能にするが,そのメカニズムは予備動作に伴う下肢の荷重局面に応じて異なることが明らかとなった. (2)下肢の荷重状態が左右脚で異なる場合の側方へのステップ応答を,転倒経験のある高齢者(転倒経験者)と転倒経験のない高齢者(転倒非経験者)とで比較した.左右の脚に交互に体重をかける課題により左右脚の荷重状態を変化させ,異なるタイミングで提示される視覚刺激に対するステップ応答を比較した.その結果,いずれの実験協力者群においても,ステップ脚が加重状態にある時のステップ応答は,支持脚が加重状態にある時,つまりステップ脚が抜重状態にある時よりも遅延していた.実験協力者群間で比較すると,ステップ脚が加重状態にある時に,転倒経験者が転倒非経験者に比べてステップ応答が遅延する傾向にあった.転倒経験のある高齢者では,視覚刺激に応答し素早く左右方向にステップする能力が転倒経験のない高齢者よりも低下している可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナの感染拡大に伴い,高齢者を対象とした実験が実施できなかった.しかしながら昨年度までに計測が完了したデータを活用することで,当年度の目的であった転倒経験の有無が側方へのステップ応答に及ぼす影響の検討に加えて,下肢の荷重状態がステップ動作に及ぼす影響も明らかにすることに成功している.研究開始時より不測の事態を想定して研究を前倒しに進めていたことが功を奏し,前年度終了時までに若年者,高齢者,転倒経験のある高齢者を対象とした計測をおおむね完了しており,それらデータを活用することで次年度の研究目的も達成できる見込みである.不測の事態に応じて当初の研究計画に変更を加えながらも,研究は順調に進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的に沿って,体重移動による姿勢制御の加齢変化メカニズムを明らかにする研究を継続する.具体的には,左右どちらかの選択反応を要求する指示を視覚刺激により与える「選択反応課題」と,股関節内外転筋の筋活動により左右脚の荷重状態をアクティブに変化させる「体重移動課題」(運動課題)とを組み合わせた実験系により得られたデータから,複数課題遂行能力(認知機能)と股関節内外転筋力(筋機能)が側方へのステップ動作に及ぼす影響を調べる.股関節内外転筋力の測定結果に加えて,体重移動課題を付与した条件(複数課題条件)での選択反応時間および選択反応ステップ動作を若年者,高齢転倒非経験者,高齢転倒経験者とで比較することで,高齢者において素早い側方へのステップ応答を阻害する要因を明らかにする.
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