研究課題/領域番号 |
18H03165
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
神崎 素樹 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30313167)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 運動学習 / 立位制御 / 視覚外乱 / 内部モデル |
研究実績の概要 |
本年度では、立位姿勢制御における学習を検証するための実験系を構築し、視覚運動変換課題を用いて、立位姿勢制御における視覚情報と運動との関係を反映した内部モデルがどのように修正されるのかを明らかにし、新たな内部モデルの獲得が立位姿勢制御に与える影響について検証した。 被験者はヘッドマウントディスプレイを装着した状態で床反力計上に立ち、画面に表示された自身の足圧中心位置を画面内を移動する標的(振幅は1~4cmとした)に向かって追従させる視覚追従課題を行い、1往復を1試行とした。この課題を6試行を1ブロックとした。1~10ブロックをファミリア-フェーズ、11~19試行をベースラインフェーズとした。20~29ブロックは足圧中心が右に徐々に回転する視覚外乱を加えた。30~45ブロックは足圧中心が30度回転する視覚外乱を与えた。46~55試行はウォッシュアウト試行とし、視覚外乱は与えなかった。この実験プロトコルにより、視覚運動変換の修正による静止立位制御への影響について定量した。 その結果、視覚運動変換課題により内部モデルは修正され視覚外乱への適応が見られた。しかし追従課題による内部モデルの更新は静止立位制御へは影響を与えなかった。 以上から、視覚運動追従課題は立位姿勢制御における学習の実験系として有用であることが明らかになった。また、追従課題により獲得した運動指令生成の新しい内部モデルと静止立位制御の内部モデルは異なり、状態依存により別々の運動記憶が形成されていることが示唆された。ヒトの巧みな動きは、運動の実行・修正を繰り返すことで獲得される。新奇な運動を学習する際、運動目標に対して必要な指令を生成する脳の内部モデルが、誤差情報に基づき更新されることで、適切な運動指令を生成できるようになる。したがって、様々な環境に中枢神経系が立位制御機構を適応させている可能性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで、運動学習に関する研究は、実験プロトコルおよび解釈の困難さから上肢動作に限定されていた。 本研究は、下肢を含んだ立位動作の運動学習の実験プロトコルを構築、および実験データ二関する運動制御学的解釈を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、立位制御に及ぼす運動学習効果に及ぼす筋シナジーを影響を、生理学実験および数理解析手法を用いて明らかにする。
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