ヒトの巧みな動きは、運動の実行・修正を繰り返すことで獲得される(運動学習)。ヒトの静止立位は、内部モデルの修正(オフライン修正)だけでなく、動作中のフィードバック情報による修正(オンライン修正)にも大きく依存する不安定な運動である。(1)視覚運動変換課題および(2)オプティカルフローによる視覚外乱を用いて、立位姿勢制御における視覚情報と運動との関係を反映した内部モデルがどのように修正されるのかを明らかにし、運動学習が立位姿勢制御に与える影響について検討した。 (1)視覚運動変換課題:被験者は、ヘッドマウントディスプレイを装着した状態で床反力計上に立ち、画面に表示された自身の足圧中心位置を画面内を移動する標的に向かって追従させる視覚追従課題を行った。被験者には足関節を中心として身体を前後に傾け、足圧中心を標的に追従させるよう指示した。課題の途中で、画面に表示された足圧中心位置が実際の足圧中心位置から基準点を中心として反時計回りに回転するような視覚回転外乱を与え、回転外乱に対する視覚運動変換の修正過程を定量した。その結果、視覚外乱に対して立位は不安定になったが、試行を重ねる毎に外乱に応じた立位制御を行うようになった。 (2)オプティカルフローによる外乱:被験者は、ヘッドマウントディスプレイを装着した状態で床反力計上に立ち、画面にランダムに表示されたドッドを注視した。ドットは立位の前後方向の揺れに応じて反時計回りに開店するようにした。課題の途中で、ドッドを消去し、回転外乱に対する立位修正過程を定量した。その結果、ドッドの回転外乱が消去しても立位はドットの回転とは逆方向に傾くようになった。 これら結果より、視覚運動変換の修正が静止立位制御に与える学習効果について明らかになった。
|