研究課題/領域番号 |
18H03166
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
芝崎 学 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (00314526)
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研究分担者 |
中田 大貴 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (40571732)
大高 千明 奈良女子大学, 生活環境科学系, 助教 (00783929)
藤原 素子 奈良女子大学, その他部局等, 副学長 (30220198)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 運動 / 中枢性疲労 / 末梢性疲労 / 認知機能 / 運動関連電位 |
研究実績の概要 |
暑熱環境下で運動すると、快適な環境下での運動と比較して、疲労感を感じやすく、生体への負担も大きいため、運動継続時間が短縮する。暑熱環境下運動時の疲労は末梢性だけでなく、体温の過剰な上昇による中枢性疲労によっても誘発されることが報告されている。本研究プロジェクトでは、これらの両疲労が筋出力調節および循環調節に与える影響を客観的指標から評価する。脳活動指標として、注意力や運動遂行および抑制機能を評価するP300、運動開始に伴う随伴陰性変動(CNV)および運動関連電位(MRCP)を用いて実験を実施した。また、fMRIを用いた暑熱負荷時の認知機能への影響を検討した。基礎的な実験として、中強度の自転車運動によるP300への影響を2つの温度環境下(20℃および35℃)で検討した。P300の振幅は運動遂行でも運動抑制でも高温環境下の方が低くなったが、運動抑制において顕著な低下が認められた。これらの結果はこれまで注意力などの認知機能評価に用いられている反応時間やエラー率のような行動指標では脳機能の低下を評価し難いことを示唆しており、本研究の有効性を支持するものである。本研究結果は2019年2月にPhysiological Reportsに掲載された。続く実験では暑熱環境下での発汗による脱水に着目し、認知機能への影響を検討した。実験環境は35℃とし、中強度の自転車運動を約1時間実施した。しかし、飲水の有無が被験者に心理的な影響を与えたため、主効果が見えにくい結果となった。セントラルコマンドへの影響を検討するため、運動開始の関連する電位変化を水循環服を用いて体温を上昇させ、高体温の影響を検討した。現在、解析中であるが、MRCPでの評価は芳しくないものの、CNVでは高体温の影響が認められた。いくつかの結果は国際学会で発表し、今後も国内学会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間の後半で実施するセルフペース運動実験へ向けての予備実験において、いくつかの問題点が考えられた。課題の提示方法を検討する必要があり、提示プログラムソフトを開発する。現在、制作会社と準備を進めており、今夏までには導入できるように進めている。また、小筋群を使った実験では循環応答に大きな変化を得ることが難しく、脚筋を使った実験系を取り入れるため、負荷装置を開発することとなったが、年初から開発に取り組んでおり、夏前までには準備が整う。
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今後の研究の推進方策 |
セントラルコマンドを定量化するために検討している運動開始の関連する電位変化において、提示方法および負荷方法の改善の必要性がみられた。昨年度は事象関連電位を主にプロトコルを設定したため、運動初期の循環応答を検討するのには少し問題点がみられた。また、単純に暑熱負荷による高体温の影響のみを検討したため、効果を得やすかったが、末梢性疲労の影響を検討するためには負荷方法を再検討する必要があると思われた。そこで、本年度は上腕の小筋群を対象とするのではなく、脚部の大筋群を対象とした実験系ができるように負荷装置を製作することとした。 2つ目の実験において水分補給による注意力への影響を検討したものの、予想外に2回目のテスト時に事前対策をする被験者が複数いたため、研究期間の後半で実施するセルフペースの実験におけではモチベーションが大きく関与する実験プロトコルとなるため、提示方法の再考が必要と感じられた。来年度もいくつかの予備実験および質問調査で検討し、再来年度以降のプロトコル確立に準備する必要がある。
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