立位姿勢維持および歩行運動に関わる制御基盤を解明するため,以下の研究を実施した。 (1) 立位時の姿勢制御が歩行制御に如何に寄与しているかを解明するため,立位時に前後左右に身体を随意的に揺動させる随意的揺動タスク,風景全体が動く映像をVRゴーグルで提示された状態で立位姿勢維持を行う視覚揺動タスク,そして時速4.5kmで歩行を継続する歩行タスクにおける筋電位を計測し,全タスクに対する共通筋シナジーを推定した。その結果,これらのタスクにおける筋活動は6個程度の共通筋シナジーで説明可能であることが明らかになった。また,立位時の随意的揺動や視覚刺激により生じる筋シナジーが,歩行運動においては単に姿勢の安定化だけではなく,推進力や左右の重心移動といった動きの生成に寄与していることを示唆する結果を得た。 (2) 「浮くように立つ」武術的立位である「垂直離陸」における重心動揺特性を解析した.その結果は,垂直離陸の操作は立位を不安定化すること,さらに,垂直離陸という武術的立位法が,接触する2人の協調的な姿勢維持メカニズムを部分的にかく乱していることが明らかになった. (3) 歩行制御については,受動歩行機械に着想を得た単純な2次元2足歩行ロボットを用いて,深層強化学習により,1つのパラメータのみで,歩行と走行,そしてそれらの遷移を生成可能な制御則を学習により獲得可能であることを示した。 (4) 脚姿勢および足先にかかる負荷に応じて励起される反射運動の連鎖で多足歩行が実現可能なこと,また,歩行の安定性向上には身体の形態的特性が大きく寄与することを6足歩行シミュレーション実験により明らかにした。
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