研究実績の概要 |
日常生活の中で体の冷えを感じる女性は多く、成人女性を対象とした調査では約半数の人に冷え症の自覚がある。冷え症の女性は高い冷覚感受性を示すことが報告されているが、その生理的機序には不明な点が多い。これまでの研究において研究代表者たちは、足背部への局所冷却刺激中の脳活動を閉眼安静時の脳波 (EEG) から検討した結果、冷え症者の冷覚に関わる脳機能の違いは8-10Hzの低周波数α波の一過性応答の差となって表出されることを示した。すなわち、冷え症者は非冷え症者に比べて安静時の低周波数α波の出現率が低く, 急速な局所温の低下により非冷え症者ではその出現率が低下するが冷え症者では変化しないことが示された。 本年度は、冷え症の冷覚に関与する脳活動の特徴をさらに明らかにするために、冷え症とそうではない若年女性を対象として、 全身性冷却により冷却する皮膚面積を増加させると、冷え症者のEEG応答の相異が顕在化するか否かについて検討した。脳波は閉眼時に頭頂部から導出し、4周波数帯 (θ、 α1、 α2、 β)のスペクトルパワーを解析した。全身性に皮膚冷却を行うために、水循環スーツを用いて平均皮膚温を36-36.5℃から34-34.5℃に低下させた。その結果、冷え症のEEG特性として、 1) 全身性皮膚冷却時の低周波数α波の低い出現率、および 2)全身性の皮膚冷却中におけるβ波の高い出現率が示された。 また、本年度末からは平成31年度に実施予定の研究「冷え症状に及ぼす運動介入の効果」の予備実験を開始した。
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